古代の人々は「船」に特別な思いを抱いていました。家の屋根を「船」と見なす文化も広く存在していたと考えられます。屋根には懸魚(げぎょ)や鰹木(かつおぎ)など、水に関わる意匠が施され、屋根そのものも船の形を模したものが古代には多く見られます。船が重要な移動手段であったことを思えば、それを屋根に表すことは自然な発想でしょう。
古代エジプトでは、太陽神ラーが「太陽の船」に乗る姿が描かれ、さらにスカラベや鳥、人間なども船とともに表現されています。私は八咫鏡の構造の中心部分を「目」「船」「さなぎ」「冥界」「黄泉」と結びつけて考えています。この船は死者や霊魂、神霊、精霊を乗せて巡行するものと捉えられます。
中央の「目」の形は、古代エジプトでは「ミイラ」と理解されていたのではないでしょうか。ミイラは薬剤やタールを塗って腐敗を防ぎ、全身が黒くなります。その上に白い布を幾重にも巻き付けます。この姿は、目の黒目がミイラ、白目が布に対応するように見えます。つまり、目そのものが白布に包まれたミイラを象徴しているのです。そして、この中央の目は船であり、ミイラを乗せた船となります。この船は冥界や黄泉から現世へと巡行し、再生と復活を果たすのです。
家形土器
家形土器の屋根に表された「ミイラを乗せた船」は、楕円形の穴に水を灌ぐことで巡行を始めます。ミイラはこの巡行によって魂や霊が宿り、再生・復活を遂げるのです。古代の人々は、現世で亡くなった者や祖先の魂が、この船を通じて生きる人々に力を与えてくださると信じ、祭祀を行ったのではないかと考えられます。
※ 写真はegiptologyさんの投稿、八咫鏡の構造はカタカムナ研究家吉野信子氏の著書より引用




