英語を苦手とする中学生、高校生が増えていること……。
とても残念です!


前回も言いましたが(⇒ココ)、現場で英語を教えて来た者としての正直な実感です。
英語が嫌い。英語が苦手という生徒が増えている大きな原因。
その一つが小学生や幼児段階での英語の早期教育にある。
私にはそう思えます。
ご存知かも知れませんが、小学生や幼児対象の英語はゲームや歌を取り入れたり、挨拶や簡単な日常会話中心で楽しく学べるように工夫されています。
これは、英語という外国語に慣れ親しむ点でとても良いことのように思えます。
実際この段階で苦手だ嫌いだという生徒はあまりいません。
しかしそこが実は落とし穴


中学に入ると当然「お遊びの英語」はお終いです。文法だの語法だの、規則動詞や不規則動詞だのという「めんどくさい」話になって来ます。
私も経験していますが、何とまだ中1の1学期疑問文を習う段階で早くも脱落者が出て来るのです。
たとえば…
This is a pen. →Is this a pen?
これは良いとして
You have a ball. →Do you have a ball?
He has a bat. →Does he have a bat?
ここらで生徒たちはつらそうな顔になり…

He looks at me.
He doesn’t look at me.
この辺で苦痛にゆがみ…

have →has
look →looks
study →studies
watch →watches
こうした動詞の変化を覚える段になると完全に英語ギライになる!



つまり小学生までは彼らにとって英語とは、ゲームや歌を通して遊びながら学べる楽しい「娯楽」であった。
五感を通して自ら楽しみながら学べるのが英語であった。
しかしそのプラスイメージは中学入学で一気にひっくり返されてしまう!


小学校までの英語は感覚的な学び、いわば右脳的なトレーニングで音楽や体育に近いものであったのに、中学では英語は語学として文法などのめんどくさい規則を暗記したり理論的、分析的に学ぶ、いわば左脳中心の「勉強」になるのです。
極端に言えば「遊び」から一気に「学問」にハードルが上がったようなものです。
そのギャップが必要以上に子どもたちに英語を難しく感じさせているのです。
というのも、昔(中学から英語を初めて習う生徒が大部分だった頃)と比べて、生徒たちの英語に対する嫌悪感がずっと大きくなっていると感じるからです。
多分、子どもたちは裏切られた


あんなに楽しかった英語が、何とも無味乾燥で冷たいモノに変身したということにです。
もし子どもたちが早期に英語を学ばなかったなら、つまり昔のように中学でほとんどの生徒が初めて英語に触れるなら、このようなギャップもなく、より新鮮な気持ちで新しい教科英語に取り組むことができたでしょう。
少なくとも今ほど英語ギライを生まなかったと思います。
私個人の体験でも、中1で初めて英語を習った感動は忘れられません。
幸い先生の教え方のうまさもあって、私は英語が大好きになり英語の教科書や参考書を読むことに夢中になりました。
thの発音のしかた、vやfの口唇の動き、rとlの舌の動かし方も先生の懇切丁寧な指導もあり、最初にマスターできたことは本当にありがたかったと思っています。
私の英語の基礎は、中1の1学期に全て完成しその後の私の方向を決めたという意味で実に大きな収穫でした。
このように英語は最初のスタートが極めて重要です。
現状はまさに中1の最初の段階で多くの生徒たちがつまずくのです。
何度も言いますが、これはきわめて残念なことです!
特に英語を教える者としては、彼らが中学入学の時点で新鮮な好奇心を既に持っていない現実に歯がゆい思いです。
これからが英語の面白さを知る、そのスタートだというのに…。
色々話してきましたが、以上の経験から私は英語の早期教育に反対です。
英語学習のスタートが幼児や小学生向きの「お遊び英語」である限り、英語ギライが増えるという「悲劇的構造」は変わりません。
会話重視と言いながら、大切な発音の基本さえ教えず、ただ遊んでいるだけの早期教育ならやるだけムダ!
いやムダならまだしも有害でさえあるという事実。このことを知っていただきたいのです。
ところで、もっとも本質的な疑問があります。
そもそも私たち日本人が英語を学ぶ意味は一体何なのでしょう?
英語を学ぶのが当り前というのが前提になっている今、あえて疑問を呈したいのです。
次回はこのあたりも含めて「英語問題」について考えてみたいと思います。

