以前私の父について書きましたが、父親の言葉というのはすぐその場で役に立つというより、ずいぶん後になって―時には大人になって―からその意味するところが理解できる場合が多い気がします。
父親が子どもにどんな影響を与えることができるのか。
父親が子どもの教育にどんな役割を果たしているのかと考えたとき、母親ほどには明快に答えることができません。
それでも父親には確かに父親しかできない役割があることも確かです。
今回はその辺についてちょっと考えてみようと思います。
父親の役割が不鮮明なのは母親と比較してみれば一目瞭然です。
母親の場合。
父には出来ない母親の大切な役割とは……
まず母親は子どもを産むことができる(笑)。
コレはすごいことです。
子どもという新しい生命をこの世に産み落とす。時には自分の命と引きかえにして。(今でこそ出産で命を落とす人は少ないが、昔は命がけの難事業だった。)
現在でも妊娠、出産は、とてつもないエネルギーとリスクを負う、女性にとって人生でもっとも大きなイベントの一つであると思います。
そして、生まれた後は授乳し抱いてあやし、さらに安全を確保しながら注意深く育てる。
これが赤ちゃんから幼児期に至るまで延々と続きます。
この間はもちろん父親の助けもあるでしょうが、基本的に母親が担う負担は膨大なものです。それでも多くの母はこの責務を全うするのです。
いくら子育てに協力的な父親といえど、この「子どもの生命」を守り、育てようとする母親の献身的(犠牲的?)努力の前には、影うすい存在でしかありません。
そう。まさに母親の役割とは、無償の愛と献身にあります。そしてそれは子どもの命に直結している。
世にいう母性とはまさにこの母親の性質を指しています。
だからこそ母親は子どもにとってプライマリーオブジェクト(Primary Object)、すなわち第一義的に大切な存在と言われるのです。
これに対して父親の存在は、Second Object に過ぎません。
これは父親が大切ではないという意味ではありません。
母親が子どもを産み育てていく、つまり生物として子どもと肉体的につながっている感覚に基づいて直接子どもの命を生かす役割を担っているなら…
父親はより間接的に関わっていく存在と言えるのです。
で、その役割とは大きく分けて次の2つだと思います。
1つは、子どもに社会性を身につけさせる。
もう1つは、子どもに対する適切な動機づけです。
社会性といえば、きちんと挨拶するなどしつけのことを連想するかも知れませんが、それなら母親でもできることで、ここで言いたいのは、むしろ社会道徳や倫理観に近いものです。
公的感覚といって良いかも知れません。
たとえば個人の利益と集団や社会の利益が相反したとき、場合によっては自己の利益(エゴ)よりも大義(全体の幸福)を優先させることができるか。
広い視点から考えてどうするのが人間として善なる行為か。
それを教えるために父親は、時にはガンコオヤジとなって、子どもの利己的行動や逸脱行為を厳しく叱ることも必要になります。
父親は社会性、道徳の体現者として子どもの前に立つことで、子どもと社会の橋渡しをしていると言えます。
2つ目の動機づけについては、前にも話した通り「目先の損得」にとらわれず、物事の背景や本質に興味関心を持たせることです。
それによって子どもの知的好奇心を育て、人生の課題に立ち向かわせる原動力を育てるのです。
例えていうなら、母親は子どもの命を守るために母性という無償の愛で子を包み込み、父親(父性)はその包みを解いて子どもを寒風(社会)にさらすことで自立を促す役割を担っている。
母性の役割は子どもに生きる糧である愛情を注ぎこみ、生きることの喜びを教える。
父性は子どもが社会で生きていく上での知恵を授ける。だから父の「教え」は人生の後半に活きてくることが多い。
そんな風に言えると思います。
今日は父親の役割について考えてみました。
いよいよ明日は「平成父親塾」。
お父さんたちと父性について語り合ってみたいと思います。
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『今の子どもたちにはこんな父親が必要だ!』
2012年に開催し大好評だった「平成父親塾」。
今回はさらにパワーアップして第2弾をお送りします!
講 師:管野淳一(教育研究所ARCS所長)
ゲスト:鈴木久夫(塾クセジュ代表)
日時:2014年7月5日(土)19:00~21:00(開場18:30)
場所:アミュゼ柏・クリスタルホール(千葉県柏市柏6丁目2番22号)
イベント申込み締切日:2014年7月4日
http://arcs-edu.com/event.html

