私たちは、なかなか「ありのままの現実」を見ることはできません。
いや、そんなことはない。私は確かにこの眼で見たのだ!
この耳で聞いたのだ!
多くの人はそう言います。見たから聞いたから、嗅いだから、触れたから、味わったから… 確かだ!
と言うわけです。
本当にそうでしょうか?
私たちの五感はそれほど信じるに足るものでしょうか?
そしてその五感で感知したものごとの総体が私たちの「経験」を形づくっている以上、もしその五感が不確かなものだったら私たちの「経験」そのものも不確かということになります。
実際私たちの五感が案外あてにならないことは誰でもが経験しています。
同じ一つの事象を見聞きしてもその印象は人によってバラバラだったり、全く違うモノとして認識していたりします。
ましてそこに価値判断や好悪の感情が絡んでくると大変です。
ある人にとって素晴らしい出来事が別の人にとっては嫌悪すべきものであったり、ある人にとっての美しいモノや経験が別の人には罪深き恐ろしいものだったりするのです。
そしてこの価値判断や好悪の感情の大半は私たちが成長する過程において親や世間から教えこまれ、無意識のうちに身につけてしまったものです。
これを固定観念と言います。
冒頭に私たちが「ありのままの現実」を見れないと言ったのは、実はこの固定観念のフィルターを通して見ているせいなのです。
汚れやホコリで曇った窓ガラスを通して外を見ているようなものです。
あるいはサングラスをかけているようなものです。
そうしながら「今日は曇ってるなア」とか「やけに暗いなア」と言っているわけです。
窓ガラスをふき、サングラスを外せば晴れ渡った素晴らしい景色(真実)が見えるというのに、私たちはなかなか自分のフィルターが「現実」をゆがめていることに気づかないのです。
ところで、私たちは自分の子どもの「現実」さえもフィルター越しに見ていることをどれだけ自覚しているでしょうか。
たとえば子どもが勉強もせず、部活で疲れたと言ってソファでダラシなく寝ころんでいる姿を見たとき、また携帯スマホをいつまでもいじっているのを見たとき、TVや音楽をつけたままナガラ勉強しているとき…。
親は「ヤレヤレ困ったことだ」と思います。
何とかしなきゃイカン…などと心の中でつぶやきます。
しかし本当に「困った現実」が起こったのでしょうか?
親はこれらの子どもの姿を見ると、世間一般の常識や自らの固定観念を瞬時に当てはめて価値判断し、好悪の感情と共に「困った」と結論づけるのです。
長年子どもの成長過程を見てきた私からすると、これは短絡だと感じます。
確かに部活に夢中なあまり勉強がおろそかな子はいます。でも、その子は部活を通して人間関係の大切さやリーダーシップの何たるかを学んでいるのかも知れません。
そのことが社会に出てから大きな才能(武器)となって成功することがあります。
ゲームばかりやった結果ゲームソフトの会社に行く子もいるのです。
音楽好きが長じてレコーディングディレクターになったり、漫画(ベルサイユのバラ)に夢中な子がフランス史専門の歴史学者になった例もあります。
こうして見ると、子どもの今の「困った状況」は将来の「豊かな現実」へ続くプロセスの一部であることが分かります。
いや、むしろ子どもたちの「今の現実」の中にこそ無限の可能性が見てとれるのです。
私たち親が曇ったフィルターを外して、ありのままの子どもたちの姿を見さえすれば。
窓をふき色メガネを外しさえすれば、可能性に満ちた子どもたちの姿という景色が現れるのです。
親が常識や固定観念、価値観にとらわれ、そのフレームに当てはめていた時には見えなかった「子どもの現実」が見えてくるのです。
そこには「困った現実」ではなく「ありのままの現実」があるだけで、困っているのは現実をゆがめて見ている親の見方そのものだったのです。
今日お伝えしたかったこと。
それは、親は子どもを健全に育てたいと願うあまり、つい子どもの欠点や問題行動を何とかしようと思いがちで、そのようにマイナスを見つけて是正しようとする行為(doing)それ自体が、世間の眼や親自身の思い込み(固定観念)を通して子どもの「現実」を判断しているということです。
子どもを変えようとする思惑は、子どもを一層悪い方向へ追いやることが多いのです。
子育てに絶対的な正しい方法などありません。
子どもを変えようとするコントロール欲求を思い切って捨て去り、むしろ親自身がこれまでの人生で身につけてしまった観念(フィルター)、常識、思い込みと向き合い点検していくこと。
大切なのはそういう親のあり方(being)の方なのです。
言い換えれば親自身がこれまでの生き方を見直すことが、実は結果的に子どもを良い方向へ向かわせる「事実」を知って欲しいと思います。
親が変われば子どもだって変わる。
子どもの「困った問題」にお悩みの方はぜひ試して頂きたいと思います。
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