明治初期に日本を旅した英国女性イザベラ・バードに少し興味があったので読んでみた本。
当時の日本各地の風景や人々の暮らしが、イザベラ・バードの目にどのように映ったのかを知りたいのであれば、本人が書き記した「日本奥地紀行」などの旅行記やそれらを紹介する本を読むべきなのですが、この小説では、イザベラの日本での最初の旅を、イザベラと通訳兼ガイドとして同行した伊藤鶴吉(本書では伊東鶴吉)の交流に焦点を当てて描いており、そこが面白そうだったので読んでみました。
主要街道ではなく、まだ外国人が通ったことのないような道を行きたがるイザベラと、快適な道を快適な交通手段で移動して、快適な宿で過ごしてもらいたい、そして何より田舎の貧しい暮らしを見られたくないと思う鶴吉。
両者の道中でのやり取りは、友好的な異文化交流というよりも、どちらかと言えば文明・文化の衝突。
同じ日本人として日本の美しくない一面を見られることを恥ずかしいと思う鶴吉の思いはよくわかります。
現代において、もし自分が鶴吉と同じように外国人を案内することになっても、同じ心持になるかと思います。
この旅を通して、イザベラと鶴吉はわかりあえたのかどうか。
小説は小説らしい結末となりますが、実際のところどうだったのかというところもすごく気になります。
この小説では、イザベラと鶴吉の旅の道中での交流だけでなく、二人が出会う前のそれぞれの背景も描かれており、明治維新直後というまだ不安定な時代の流れの中に二人の旅があったということがうまく盛り込まれているところも面白かったです。