文庫になったら読もうと思っていた、日本植物学の父、牧野富太郎の生涯を描いた物語。
歴史に名を残すような素晴らしい業績を上げた研究者であっても、一社会人、一家庭人としては誉められる人ばかりではありませんが、牧野富太郎という人も、まあとんでもない人です。
牧野富太郎をモデルとした朝ドラ「らんまん」でも、そういうとんでもない一面をやんわりとは描いてはいましたが、この小説ではほぼ忖度なし。
読んでいると、妻の壽衛さんをはじめ、多くの登場人物については朝ドラのキャストの顔が思い浮かびましたが、牧野先生だけは全然神木君じゃない...
植物に対する揺るがぬ情熱が、土佐の片田舎の少年を偉大な植物学者たらしめた大きな原動力ではありますが、人並みの良識や良心を持ち、それに縛られるような人であれば、おそらくどこかで挫折していたか、今ほど名を知られる植物学者にはなっていなかったことでしょう。
情熱だけで突っ走ることができたのは、周りの支えがあったからこそですが、周りは本当に大変な思いをしていたんですね。
今は、図鑑や植物園で、手軽に牧野先生の功績に触れることができますが、これからは、牧野先生を支えたすべての人々にも想いを馳せながらその功績を享受させていただこうと思います。