今週末に開催される神戸モダン建築祭。
本開催に先立って実施されたクラウドファンディング限定のスペシャルツアー「神戸女学院」に参加してきました。
一度見学してみたかった神戸女学院。
学校が開催しているツアーも年に何度かあるのですが、クラウドファンディングの趣旨にも賛同したので、この機会に申し込みました。
2014年に国の重要文化財に指定されたヴォーリズ設計の12棟の建物のうち、中核をなすいくつかの建物を建築史家の笠原一人先生の案内で巡ります。
正門から坂を上って最初に現れる音楽館。
こちらは外観のみの見学でしたが、2階建ての建物が多い中、この建物は高さがあり、迫力を感じます。
文学館の中を通って、まずは中庭へ。
この中庭を取り囲むように主要な建物が配置されている様式は、設計当時のアメリカのキャンパスの様式を取り入れたものだそうです。
中央の噴水池を挟んで対面にある建物は理学館。
噴水は四葉のクローバー。
理学館の2階中央の三連窓の下の突起部はバルコニーだそうですが、戦時中の金属供出で鉄柵が失われたそうです。
振り返って文学館。
理学館とは中央部のデザインも異なりますが、窓枠がやや太めのアルミの窓枠に取り換えられているそうで、そういうところでも少し雰囲気が異なります。
文学館の向かって右側には図書館。
最後に見学します。
図書館の対面には総務館。
各建物、1階部分の外壁はスクラッチタイルで装飾されています。
玄関を縁取る部分には竜山石、足元の階段などには御影石など、様々な素材が使われているそうです。
総務館に隣接する礼拝堂。
屋根はトラス構造の小屋組み。
うっすらとまだらな縞模様が見られる壁の風合いも趣があります。
窓ガラスに少し色が入っており、黄色味を帯びた柔らかな光が差し込む様がとても印象的です。
礼拝堂の外観。
扉の上の点々の部分は泰山タイルが埋め込まれているのだそうです。
細かな装飾にもこだわりが詰め込まれています。
総務館の階段。
窓には校章にもなっているクローバーの文様。
建物のいたるところにクローバーの文様が施されており、それを見つけるのも面白いです。
2階にある理事室。
こうした実務的な部屋にも様々な工夫がなされており、美しさだけでなく機能性にもこだわるヴォーリズの建築思想が現れています。
こちらのテーブルは創建当初(1933年(昭和8年))からのものだそうです。
図書館とともに最も観たかった建物、講堂。
吹き抜けの天井、半円形のプロセニアム・アーチに縁どられた舞台、その左右のトレーサリー、側面の縦長窓とその上のアーチ、礼拝堂と同じ壁の風合い...とにかく美しい空間です。
後方2階席を望む。
天井は少し和を感じる網代模様となっており、中央に八芒星。
先ほどの礼拝堂とはまた違いますが、カーテンとランプで装われた窓も素敵です。
講堂入口脇の階段もいい雰囲気。
講堂の正面玄関。
2階にはバルコニーもあり、中央上部にはクローバー。
最後は図書館。
知の泉への入口には重厚な階段。
2階に上がると閲覧室。
本を保護するために窓は北向きだそうですが、吹き抜けでけっこう明るい空間です。
こちらは何といっても天井。
カラフルなアラベスク文様がなんともかわいらしい。
勉強で疲れた時に、天井を見上げると目の疲れも気持ちも和らぐでしょうね。
こちらの机や椅子も創建当時からのものだそうです。
読書灯も味があります。
閲覧室からバルコニーに出ての眺め。
2階からだと実はいろいろな色の屋根瓦が使われている屋根の特徴がよくわかります。
モザイクタイルなんかと同じく、不揃いでありながらなぜか調和しているんですよね。
中庭と総務館と理学館。
神戸女学院はお隣で同じヴォーリズ設計の関西学院と同様、スパニッシュミッションスタイルという建築様式ですが、カリフォルニア感が強い関学に対して、神戸女学院はとても落ち着いた雰囲気があります。
以上、90分間のツアーでしたが、見どころたっぷりで、かつ、覚えきれないほどたくさんのことを細かいところまで詳しく解説していただき、あっという間でした。
これだけの建物が創建当時とほぼ変わらない姿で残されている神戸女学院は、京阪神の数あるモダン建築の中でもやはり別格ですね。
少々お高かったですが、本当に素晴らしいものを見せていただきました。