元禄期に書かれた「土芥寇讎記」(どかいこうしゅうき)。
聞いたことのない書物ですが、幕府の隠密が探索してきた諸大名の行状や評判に関する報告を幕府の高官が人物評としてまとめたものではないかという説のある希少な書物だそうです。
この本では「土芥寇讎記」に記された内容を中心に、戦国末期から元禄期にかけての大名の本来の姿がどのようであったかを紹介しています。
水戸光圀、浅野内匠頭と大石内蔵助、池田綱政、前田利家、前田利常、内藤家長、本多作左衛門...
特に水戸光圀や浅野内匠頭の大石内蔵助などは、様々な作品を通して見るイメージとはかなり違っていて、こういう話をまったく聞いたことがない人が読むと驚くことでしょう。
水戸黄門はともかく、忠臣蔵はまったく美談に思えなくなってしまうかもしれません。
その他のお殿様の話も面白いですが、特に前田家と徳川家のヒリヒリするような関係性と水面下の攻防がとても面白かったです。
歴史の教科書的には徳川の天下は豊臣家の滅亡をもって定まったとされていますが、徳川としては前田家3代目、利常の死をもってようやく定まったと実感したのかもしれません。