ヤマケイ文庫ってちょっとニッチでおもしろいかも、と思い始めている今日この頃。
山や自然をテーマにした様々な本がありますが、この本は、植物学者、牧野富太郎博士が残した数々のエッセイから山と植物に関わるものを選んで編集したものです。
日本各地の山とそこに自生する植物に関するウンチクが中心ですが、その中で特におもしろかったのは利尻山への植物採集紀行。
牧野博士は山に植物採集に行くと、採集に夢中になるあまり、その他のことがおろそかになることがあるようで、利尻山でも植物採集に時間を費やし過ぎたために下山できなくなり、野営や充分な食料の準備のないまま山中でビパークし、最後はずぶ濡れになるなどしながらも、納得いくまで採集を続けたそうです。
はじめての東京への旅でも、道中で珍しい植物を見つけては採取し、高知へ帰る途中には同行者を京都の宿に待たせて一人伊吹山に登ってしこたま植物を採取して荷物が山のようになったのだとか。
本人も自分のことを生まれながらにして植物の愛人、もしくは草木の精と言っていますが、根っからの植物オタクであることがよくわかるエピソードの数々。
周りは大変だったでしょうが、こういう人だからこそ、日本の植物界の父と呼ばれるような植物学者になったのでしょうね。
各エッセイの末尾には、その山の簡単な解説文もついているので、これをきっかけに牧野博士が登った山に出掛けるのもいいかもしれません。