本屋でふと目についた本。
月山も鳥海山もとても好きな山だし、「月山」は芥川賞受賞作品ということだったので買って読んでみたのですが...
正直、私の不得意とする分野の作品で、読み切るのにかなり苦労しました。
「月山」は、奥深い月山の山懐にある破れ寺と言ってもいいほどに荒んだ寺に一冬居候した男の話で、この男の一人称で語られる、雪に閉ざされた山村とそこに住まう人々の暮らしぶりが何とも幽玄で、作品を包むこの空気感は好きです。
月山、鳥海山に挟まれた庄内地方と言うと、個人的には藤沢周平の海坂藩の世界をイメージしますが、多少なりとも相通じるものを感じます。
ただ、寺のじさまに飯の世話などしてもらいながら、何もせずに過ごす男に「おまえ、ちょっとくらい働けよ...」とまったく共感が持てず、強い訛りに会話の内容がすんなり入ってこず、さらに特に何かが起きるわけでもなく淡々と時が流れて季節が移り変わっていくだけという三重苦に参りました。
そういう阻害要因を乗り越えたところに見えてくるものが、この作品の主題と言えるもので、その端緒はつかめたような気がしますが、本当にこの作品のよさを実感するには、何度か読み返す必要がありそうです。
カメムシのくだりが妙に印象に残りました。
「月山」の他には「鳥海山」などいくつかの短編が収録されていますが、この中ではやはり「月山」が抜けて秀逸でした。