奈良国立博物館で開かれている藤田美術館展を観に行きました。
お目当ては何と言っても世界に3点しか現存しないという窯変天目茶碗。
展示室には特別なブースが設けられていて、長蛇の列ができていました。
油滴天目茶碗は東洋陶磁美術館などで見たことがありますが、窯変天目茶碗は初見。
茶碗を見る時、吸い込まれるような感覚を抱くことがありますが、この窯変天目茶碗は、吸い込まれた後、さらに宇宙に放り出されたかのような無限の空間の広がりを感じます。
長次郎の黒楽茶碗がブラックホールだとすると、この窯変天目茶碗は銀河。
実物は小さなものなので、気持ち的にも一歩引いてみることなりますが、館内で放映されていた8Kの映像が見事で、茶碗に光が差し、青くきらめいた瞬間はぞくぞくっとしました。
他にも仏教美術を中心に様々な名品が見られましたが、快慶作の地蔵菩薩立像の美しさが特に印象的でした。
あとは、個人的な好みで、交趾大亀香合、古伊賀の花生、尾形乾山作/尾形光琳画の角皿、伝野々村仁清作の宝船置物など、陶磁器の名品がよかったです。
藤田美術館のコレクションは、明治期に活躍した実業家、藤田傳三郎親子が私財を投じて収集したものだそうです。
明治に入り、文化財、美術品が国外に散逸する危機にあった日本において、こうした実業家たちが私財を投じて文化財、美術品を収集し、守ってくれたおかげで、今、こうして私たちが観ることができる...それは本当にありがたいことです。
藤田美術館展観賞の前後には、周辺を適当に散策。
興福寺では中金堂が完成していました。
300年ぶりの復興だそうです。
堂内の須弥壇には御本尊として釈迦如来像が、脇侍として薬王・薬上菩薩像、四方に四天王像が配されていましたが、真新しい壁や須弥壇は真っ白で何の装飾もなく、金箔が貼り直されて金ピカの釈迦如来像はいいとしても、他の仏像の古びた姿とは大きなギャップがあり、建物と仏像が全く馴染んでいませんでした。
これからさらに内部にも装飾などを施していくのでしょうか?
とはいえ、中央部がぽっかりと空いて、がらんとしていた伽藍が中金堂の完成で少し充実してきたように思います。
今後、中金堂を囲む回廊や中門が再建されれば、立派な伽藍になるのでしょうね。
道すがら見つけたならまち格子の家。
奈良町の伝統的な町家を再現したこの施設は、内部も無料で見学できるようになっています。
間口が狭く、奥行きが長いのが町家の特徴で、手前から、みせの間、
中の間、
中庭があって、その奥に奥の間があり、蔵がある。
そして、主屋の列に沿うように通り庭が設けられています。
通り庭には二月堂のお水取りで使われた龍松明が飾られていました。
中の間の階段を上がると、つし二階も見学できます。
典型的な町家の造りですが、何より印象的なのは、格子窓や中庭などによる採光の工夫。
ものすごく明るいというわけではないのですが、差し込む光がとても柔らかで、落ち着く空間を作り出しています。
ひとつひとつの調度品にも趣があります。
こうした伝統的な町家は、現代的な生活を送るには使い勝手がよいとは言えないと思いますが、もし万が一家を建てることがあるならば、町家のいいところを取り入れて建ててみたいですね。
ならまちでは、以前から気になっていたふきんも買ってみました。
奈良特産の蚊帳生地で作られたふきんは、吸水性抜群で乾きもよく、丈夫で汚れもつきにくいのが特徴。
そういえば、昔は家でもこういうふきんを使っていたような。
食器、食材拭きから、台拭き、雑巾と、使い倒してみたいと思います。