あべのハルカス美術館で開かれている「ミラクルエッシャー展」に行ってきました。
エッシャーというと「滝」や「物見の塔」といった作品に代表されるような”錯視”の印象が強いですが、他にも様々な作品があるのですね。
人物や風景なんかも多く描いているのが意外でした。
ただ、やはり、エッシャーの魅力、面白さというのは、現実と幻想が入り交じる不思議な作品の数々にあると思います。
まず、見た瞬間は、脳みそをひっくり返される、揺さぶられるという感覚なのですが、そのあと、上と下、右と左、前と後、凸と凹、昼と夜、空と水、白と黒、二次元と三次元、具象と抽象、自然と科学など、物質や概念の転換点、変わり目、境目の愉しさをじんわりと感じます。
また、エッシャーは生涯、版画にこだわり続けたそうですが、日本の浮世絵の版画が、「下絵を描く」、「版木を彫る」、「紙に摺る」という工程を分業で行っていたのに対し、エッシャーは下絵を描くだけでなく、彫る作業も行っていたそうです。
一つ一つの作品が、多くの時間を費やし、繊細で地味な作業をコツコツと続けて生み出されたものである。
それだけでも驚嘆すべきことですが、リノカット、木版、木口木版、リトグラフ、メゾティントと、新しい技法をどんどん取り入れていったことにも驚きます。
これまで、エッシャーは、別のテーマの展覧会で数点の作品を観た程度でしたが、今回、生涯を通しての作品の展示を観て、その多彩さ、奥深さを知ることができてよかったです。