「自分」の壁 (新潮新書)/新潮社- ¥799
- Amazon.co.jp
ここでいう「自分」とは、養老さん個人のことではなく、「自己」や「自我」といった意味の「自分」のこと。
心理学用語でいうところのアイデンティティ(自己同一性)のことです。
現代日本では、教育においては個性を伸ばすことが重視され、仕事においても個性を発揮することを求められる風潮が強まっています。
どんな分野であれ、何かしら他人がやらないこと、他人にはできないことをして、大なり小なり成果を上げた人が評価される一方で、自分とは何か、自分らしさとは何か、自分らしく生きていくにはどうすればいいのか、ということに思い悩み、行き詰まる人の存在もクローズアップされる。
そんな「自分」というものについて、養老さんが様々なアプローチから語っているのがこの本です。
序盤で、養老さんは、”自分というものは地図の中の矢印に過ぎない”というふうに語っていますが、これは実にいい表現だなと思います。
自分というのは、他者、社会、あるいは自然界、そうした自分以外の存在との相対的な位置関係を示すものでしかないというわけですが、最近、私がぼんやりと考えていた「自分像」にぴったりと符合します。
自分以外の存在なくして、自分は存在しない。
「自分」、「自分」と思い悩むよりも、他者との関係の中で、自分を地図のどこに位置付ければ一番収まりがいいのか、そう考えた方が幸せなんじゃないかと思う今日この頃。
そうすることによって自然と浮かび上がってくるものが、「自分」ではないかと思います。