有頂天家族 (幻冬舎文庫)/幻冬舎- ¥741
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京都の糺の森に住まう狸の名門一家下鴨家の三男、下鴨矢三郎が、兄弟たちと共に、一家を貶めようとするライバル狸一家に立ち向かい、京都の街を駆け回る物語。
亡き偉大な父を引くはずなのに、兄弟たちはみなどこか抜けていて、四兄弟そろってやっと一人前といったちょっと残念な有様。
兄弟たちの師は落ちぶれた天狗で、アパートの一室に引きこもって、かつて自らがさらってきて天狗に仕立てようとした人間の美女にうつつをぬかすばかり。
天狗より天狗的となったその美女は、忘年会に狸鍋を食することを恒例とする謎の会合に出入りする。
単なる狸同士の争いではなく、狸と天狗と人間とが三つ巴になって京都の街を引っ掻き回す奇想天外なファンタジーです。
「四畳半神話大系」などと同様、実在する場所が、舞台として登場し、しかもそれがかなり細かいところまで触れていたりするので、京都をよく知っている人ほど、なお面白く、思わずニヤリとしてしまう場面も多々あります。
また、狸たちを”毛玉”と言ってみたりと、ともかく表現が面白いのも大きな魅力です。
その中には、いくつかのお決まりのアイテムやフレーズがあって、事あるごとにそれらが登場するのも、ふわふわとした話の展開に、いいリズムというか、安心感というか、そのようなものを与えてくれます。
ともかく楽しい作品でした。