英国最高の巨匠とも言われるターナーは風景画の可能性を追求し続けた画家で、英国各地はもとより、イタリアを中心にヨーロッパの各国の風景をも描いています。
水彩画からスタートし、やがて油彩も手掛けるようになったターナーですが、本展では、スケッチ、原画、未完成品、実験的な作品をも含めて、そのキャリアと作風の変遷を順を追って観られるようになっています。
その中で私が印象的に感じたのは、遠近感の表現の秀逸さです。
単に奥行きが感じられるというだけではなく、近景と遠景の間に幾重にも重なって存在している大気の存在感や光のあたり方の変化が巧みに表現されていて、そこには温もりや湿り気といったものも感じられました。
また、海洋国家であった英国を象徴するかのように海や船を描いた作品も多かったのですが、「平和―水葬」という作品での黒の使い方も印象的でした。
こうしてターナーの絵を観ていると、エルガーの音楽を連想してしまいました。
「威風堂々」というよりも、「エニグマ変奏曲」のような...
英国の風景を描いているからなのか、作風に世相が表れているのか、それとも単に英国の画家だからという先入観からきているのかわかりませんが、なにかしらリンクするものがあるのでしょうかね。