風の如く 水の如く (集英社文庫)/集英社- ¥735
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「等伯」で直木賞を受賞した安部龍太郎さんの作品。
来年の大河の主人公黒田官兵衛(如水)が関ケ原合戦時に企てていた天下取りの秘策をテーマにした長編です。
関ケ原合戦直後、家康から命を受けた本多正純が、黒田長政、後藤又兵衛、竹中重門らに尋問を行い、如水の企てを暴こうとするという話を軸に、関ケ原合戦に至るまでの家康、三成、その他勢力の動向を順を追って顧みながら、次第に明らかになっていく如水の企て。
史実では、東軍対西軍、家康対三成という二極構造として認識されている関ヶ原ですが、実は長期消耗戦を想定して漁夫の利を狙おうとする第三極が存在していたという、戦国好きにはたまらなくミステリアスな”if”を、当時の各勢力の思惑を巧みに絡み合わせて描いています。
司馬遼太郎さんの「播磨灘物語」では、この頃の如水を”その後...”風にあっさりと書いていただけで少し物足りなかったのですが、この作品はズバリそこに焦点を当てていて、そういう意味では作者は違えど足りない部分を満たしてくれる作品でした。
ただ、歴史ものには珍しい刑事ものや裁判もののようなアプローチは、緊迫感をもたらしてはくれますが、個人的には如水視点でストレートに描いて、もう少しリアルっぽさを出してくれたほうが、のめりこめたような気がします。