大君の通貨―幕末「円ドル」戦争 (文春文庫)/文藝春秋- ¥570
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ハリスは日米修好通商条約を締結した人物で、その成果は特に本国アメリカにおいて外交上の偉業として評されました。
オールコックは、富士山に初めて登った外国人としても知られ、その時に日本の民衆の優しさに触れる出来事が美談として紹介されることもある人物で、帰国後には日本人やその文化について詳細に紹介する回想録「大君の都」を記しました。
しかし、日本との外交、こと通貨の問題に関しては、二人のミスリードが、小判の海外の流出や、物価の急激な上昇という事態を引き起こし、それによって生活に困窮した日本人の怒りが討幕へのひとつのきっかけとなった...というような大失態も犯していたようです。
(もちろん、彼らの交渉相手であった幕府の経済的無知や、そもそも11代将軍家斉が編み出した錬金術によって形作られた日本のいびつな通貨体系にも問題はあったわけですが...)
幕末史というと、どうしてもドラマとして面白い志士の活躍等々に目が向きがちですが、幕末経済小説とでも言いましょうか、こうして経済的な視点から観てみるのも面白いものです。