日本人への遺言 | Archive Redo Blog

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DBエンジニアのあれこれ備忘録


対談集 日本人への遺言 (朝日文庫)/朝日新聞社
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田中直毅、宮崎駿、大前研一、榎本守恵、武村正義、ロナルド・トビ。

司馬さんと各界の著名人との対談集です。


おそらく、すべて晩年もしくは晩年に近い頃の対談かと思われますが、そこには様々なテーマにおいて日本の現在そして未来を憂う司馬さんの姿があります。

中でも司馬さんが特に危機感を持っているのは、別の対談集にもあるように土地の問題のようです。

それは、元々、土地は共有財であるという意識を強く持っていた日本人が、近代社会へと突入していく中で土地の私的所有に走り、やがて高度経済成長期を経てバブル期へという時代の流れの中で、土地を投機の対象としてみなすような異常さを持つに至ったことなのですが、それについて明治維新あるいは戦後の改革の中で土地問題をきちんと整理してこなかったことを相当に悔しく思っていたようです。

行き過ぎた土地の私的所有は、土地の価値を歪め、日本という国をとても住みづらい国にしてしまっています。

司馬さんはこの問題を解決するには土地を公有化するしかないと考えていたようですが、今後そういう改革が実現することがあるのかどうか...


様々な問題を過去から現在、そして未来へと続く歴史の流れの中に据え、変らぬもの、変ってしまったもの、得たもの、失ったものを見出し、解決の道を探ろうと紡ぎ出される言葉は、長く歴史を見つめてきた司馬さんならではのもの。

浅く貧弱な歴史観しか持たない我々にとって、非常に示唆に富んだ内容で、いろいろ考えさせられます。





土地と日本人 対談集 (中公文庫)/中央公論社
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