生物学的文明論 | Archive Redo Blog

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DBエンジニアのあれこれ備忘録


生物学的文明論 (新潮新書)/本川 達雄
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「ゾウの時間ネズミの時間」の著者、本川達雄さんの本です。

サンゴ礁における共生やリサイクル、生物多様性と生態系、生物と水の関係、生物の形の意味、生物のサイズとエネルギーの関係、生物のサイズと時間の関係...

「ゾウの時間ネズミの時間」の延長線上の話と言いますか、そういった話を踏まえた上で、数学的・物理学的発想が支配する現代文明社会を、生物学的な発想でもって俯瞰してみようというのがこの本の趣旨になっています。

これを読んでいると、現代人がいかに生物学的な常識からかい離した考え方でもって生きているかということを思い知らされます。


例えば、生物のサイズとエネルギー消費量・時間感覚の関係。

生物の(体重あたりの)エネルギー消費量はサイズが大きくなればなるほど小さくなりますが、逆に生物の時間感覚はサイズが大きくなればなるほど遅くなります。

しかし、その一方で、一生の間に使う(体重あたりの)エネルギーの総量や心臓が脈を打つ回数は生物サイズに関わらず大体同じなんだそうです。

生物というのは、大体それくらい活動すれば壊れてしまうということなんですね。

それゆえ、小さな生物は多くのエネルギーを消費しながらあくせく忙しく活動するが短命であり、大きな生物は少しずつエネルギーを消費しながらゆったりと活動するが長寿であるということになるそうです。

人間も例外ではなく、このエネルギーと時間感覚の関係性に当てはめれば、寿命は大体40年くらいとなり、その間にできることも限られています。

しかし、人間は食物として摂取するエネルギー以外にも多くのエネルギーを消費しています。

そのエネルギーによって技術を生み出し、使い、本来の寿命を大きく引き伸ばし、さらに時間もスピードアップし、より長く生き、より多くのことができるように進化してきたわけです。

そのエネルギー消費量は、食物として摂取するエネルギー量の40倍にもなるそうです。

そりゃ、地球ももちませんよね。


それだけエネルギーを使って、他の生物よりもより速く、より長く生きているのに、それでみなが幸せかといえばそうとも言えず、逆に苦しんだり、疲弊してしまっていたりする...

人間ってのは滑稽な生物ですね。


ゾウの時間 ネズミの時間―サイズの生物学 (中公新書)/本川 達雄
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