ベーシック・インカム入門 (光文社新書)/山森亮- ¥882
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ベーシック・インカムとは、無条件で給付される基本所得のこと。
個人に対して、国や自治体から、生活に必要な金額が、所得などの制限なく無条件で給付されるという、既存の社会保険方式とは全く異なる社会保障制度の考え方です。
本書では、ベーシック・インカムという考え方について、原稿の所得保障との対比、その発端や歴史的経緯、社会運動との結びつき、哲学者や経済学者の議論など、多面的に紹介しながら、労働、ジェンダー、グローバリゼーション、所有といった問題について捉え直そうとしています。
ベーシック・インカム...
夢のような制度ですが、強烈な違和感を覚えます。
高所得者にまで給付するのは無駄ではないのか?
財源はどうするのか?
労働意欲、ひいては経済活力の減退につながらないか?
などなど。
また、ベーシック・インカムは、1970年代のアメリカ、イタリア、イギリスなどにおいて、その実現を要求する運動が盛んだったそうですが、その運動の担い手の多くは女性で、そこには「家事労働にも賃金を。」という主張が根底にあったようです。
このような主張は、生きることそのものが労働であり、そのために必要な所得は保証されるべきという思想にも結びついていくわけですが、そこにも引っ掛かりを覚えます。
ただ、その引っ掛かりは現代人としての発想からくるものであり、歴史を遡れば、律令体制の古代日本のように、土地は共同体の共有資産であり、人民に公平に分け与えられるものであった時代もあったわけで、あながち的外れな思想でもありません。
原始的な共同体社会が、土地や資産の私有を認めるようになり、競争を認めるようになり、やがて資本主義経済として隆盛を迎えた現代。
目覚ましい発展を遂げた一方で、持つ者と持たざる者を生み出してきたことは事実であり、その行き過ぎた部分に対する揺り戻しの動きのひとつがこのベーシック・インカムということになるのではないでしょうか。
単なるおカネの問題、社会保障の問題にとどまらず、労働と所得、個人と国家、ひいては生きることの意味までをも問い直す...
ベーシック・インカムというのは、すべての人に生活資金を無条件に給付するという単純な制度ながら、実は非常に奥深い考え方なんですね。