国家の命運 | Archive Redo Blog

Archive Redo Blog

DBエンジニアのあれこれ備忘録


国家の命運 (新潮新書)/薮中 三十二
¥714
Amazon.co.jp

外交官としてはいわゆるキャリア官僚とは異なる経歴を持つ薮中氏が、日本的外交の特質や問題点、これからの日本の取るべき進路、外交交渉のノウハウなどについて、自身の40年余りの外交の現場での経験をベースに、縦横に語った本です。

「国家の命運」という大仰なタイトルを掲げられると、刺激的な内容を期待してしまいますが、どちらかというと簡潔かつきれいにまとめられたエッセイに近い印象で、非常に読みやすい本です。

とはいえ、決して軽くはなく、ニュースなどではなかなか見えない外交交渉の裏側など、興味深い話が多々あります。

やや散逸しているような感じすら受けるほど、様々な話題に幅広く触れていますが、この中で著者がとりわけ危機感を抱いているのは、戦後日本の外交全般に見られた受け身の外交姿勢です。

この点については内田樹氏の「日本辺境論」にインスパイアされたようで、受け身の外交姿勢も辺境人たる日本人の特性の表れではないだろうかという理解を示しています。

しかし、だからと言って辺境人は辺境人らしく生きればいいじゃないかとは思えないとし、世界と互角に渡り合えるようにするためのオフェンスとロジックの重要性を強調しています。

このあたりは、やはり外交官としての矜持を感じます。

局面局面で「国家の命運」を賭けて外交交渉に挑んできた著者の経験談や提言、傾聴に値すると思います。