河童の三平 (ちくま文庫)/水木 しげる- ¥1,260
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水木しげるの「ゲゲゲの鬼太郎」と並ぶ代表作。
山奥の一軒家で祖父にのびのびと育てられてきた少年河原三平が、三平そっくりな河童、三平にいたずらを仕掛ける狸、三平一家につきまとう死神、父から託された小人らと繰り広げる奇怪な冒険ファンタジーです。
現代日本漫画黎明期に登場したこの作品は、凝りに凝った今の漫画に比べれば、絵も、演出も、台詞もおそろしく素朴。
主人公の三平は特に勇気や正義感にあふれているわけでもないごく普通の少年で、何となく成り行き任せな感じで様々な奇怪な出来事に巻きこまれていくのですが、妖怪を相手にした華々しい活躍や、河童、狸、死神らとの滑稽なやり取り、悲しい別れなど、もっと感動的に演出できそうな場面も拍子抜けするほどに淡白に描かれています。
それでいて、暗さや物悲しさといった成分を含んだ水木ワールドはしっかりと確立されているんですね。
価値観や感動を押し付けがちな作品が多い昨今、必要以上に語らず想像を挟み込む余地がふんだんにあるというのもかえって新鮮に思えます。
今の子供たちがこういう漫画を読んだら、何を感じ、何を考えるんでしょうね?