武士の家計簿 ―「加賀藩御算用者」の幕末維新 (新潮新書)/磯田 道史- ¥714
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今、映画が公開されている「武士の家計簿」。
の、これは原作と言っていいんでしょうか?
2003年に発行された新書です。
著者がたまたま自宅に送られてきた古文書販売目録の中から見つけた「金沢藩士猪山家文書」。
そこに含まれていた家計簿から、武士の懐事情、暮らしぶり、そして明治維新という大変革にどう対応してきたのかを解き明かしたのが本書です。
”お金は経済の血液”なんて言いますが、武士の家計簿からその暮らしぶりがこれほど生き生きと甦ってくるとは驚きです。
それもこれも猪山家が精密な家計簿を残していたからこそ。
当時の武士の家計は大抵どんぶり勘定だったそうですが、猪山家が精密な家計簿をつけていたのは、代々、金沢藩の御算用者、つまり会計のプロだったから。
ただ、それだけではなく、年収の2倍に当たる借金を抱え、利子の支払いだけで汲々としていた家の経済状態を打開しようという決意も、家計簿をつけるきっかけとなったようです。
幕末、借金整理に涙ぐましい努力を重ねてきた猪山家は、明治維新後、多くの士族が地位と職を失い没落していく中、当主成之が明治新政府の下でも御算用者としての実績を買われて重用され、裕福になっていきます。
そのような変革期を体験し、旧士族の盛衰をつぶさに見てきたからでしょうか、成之は資産の運用や子供たちへの教育にも非常に熱心だったそうです。
社会が大きく変革する時、新しい社会でも通用するスキルを持っているかいないかが人生を大きく分ける。
現代にも通用することですね。