ペンギンもクジラも秒速2メートルで泳ぐ―ハイテク海洋動物学への招待 (光文社新書)/佐藤 克文- ¥882
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ウミガメ、ペンギン、アザラシなどが海の中でどのような行動をとっているのか。
人間が直接観察できないこれらの水生動物の生態が、データロガーというハイテク機器を動物に装着してその行動を観察するという新たな研究方法によって、次々に明らかになってきています。
本書では、「バイオロギングサイエンス」と呼ばれるこの新しい研究分野において、第一線で長年研究に携わってきた著者が、バイオロギング研究の過程や成果について楽しく紹介しています。
例えば、ペンギンが一体どれくらいの深さまで潜るのかという疑問。
水族館で泳ぐペンギンの姿や、動物ドキュメンタリー番組などで見るペンギンの映像から想像する限りは、よく潜ってもせいぜい20メートルとか30メートルとか、そんなもんだろうと考えてしまいます。
が、実際には500メートル以上潜るペンギンもいるそうです。
それだけでも大きな驚きですが、
ペンギンは息を吸い込んでから潜り、アザラシは息を吐いてから潜る、とか、
ペンギンはある深度から海面までヒレの動きを止めて浮上し、アザラシはある深度から目標の深度までヒレの動きを止めて落ちるように潜っていく、など...
この本の中で紹介されているこれらの動物の水中での生態は、人間が潜水する感覚とはまるで異なり、非常に興味深いです。
というのが個人的な感想ですが、正直、多くの人間にとってはどうでもいい研究かもしれません。
しかし、分野を問わず多くの研究事例が示すように、こうした地道な研究が、意図しない形で人類社会におおきな利益をもたらすこともあるわけです。
そういった意味で、この「バイオロギングサイエンス」の分野において、日本の研究者や技術が世界のトップ集団に位置しているということは、誇らしく頼もしいことです。
南極での体験談などのエピソードも含めて、都会でマシンを相手に格闘している人間にとっては、新鮮な驚きに満ち溢れた一冊でした。