小布施 まちづくりの奇跡 (新潮新書)/川向 正人- ¥756
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しかし、その時は特に下調べもせずに訪れて、ほんの数時間滞在しただけだったので、どこに魅力があるのかイマイチわからないままだったんです。
それがちょっと気になっていたんですが、そんな折に、こんな本が出たので読んでみました。
小布施のまちづくりの特長は「修景」という手法にあります。
ある時代の町並みをそのまま再現・維持しようといういわゆる「町並み保存」という方式では、一見タイムスリップしたような感覚を味わえるようにも思えますが、創られた感が強く出てしまい、人の生活の息吹が感じられないものになってしまうことも少なくありません。
それに対してこの「修景」という手法では、歴史的な町並みを忠実に再現・維持することに固執せず、いきいきとした人の生活が感じられるような空間の雰囲気を重視しています。
今そこに暮らす人々の生活の利便性も尊重しつつ、少しずつ修復を繰り返すことによって、昔ながらの町並みの雰囲気を作り出していこうということです。
この「修景」という手法、歴史的な景観を形ではなく心で継承するということなのかもしれませんね。
だからこそ、人々は小布施に引かれるのかもしれません。
日本の多くの街は、様々な様式の建物が雑然と立ち並び、その景観に明確な街の個性と一体感といったものが感じられません。
歴史的な観光地を訪れても、部分的に町並み保存による歴史的景観が見られても、ちょっと角を曲がれば、ちょっと裏に回れば、たちまち雑然とした町並みが現れます。
私は常々、そんな日本の町並みに恥ずかしさすら感じるのですが、この小布施流の「修景」というまちづくりの手法はそんな日本のまちづくりのありかたを見直す1つのいい事例のような気がします。
小布施、もう一度、ゆっくり訪れてみたくなりました。