思い出袋 (岩波新書)/鶴見 俊輔- ¥798
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著者の鶴見俊輔という方を全く知らなかったのですが、タイトルと帯で買ってしまいました。
この本は、戦後の日本の言論・思想界において一種独特な足跡を残してきた著者が、戦中・戦後を通して出会った人、書物、思想、自身の考え、行動などについて回想した雑誌「図書」の連載を編集したものです。
生きた時代を共有できないが故に、また、己の知識のなさ故に、言葉の奥に込められた想いのすべてを理解することができないのが残念ではありますが、卓越した知性と感性からしなやかに繰り出される言葉と、その独特な言い回しが非常に印象的でした。
特に印象に残ったのは、
「この戦争で、日本が米国に負けることはわかっている。日本が正しいと思っているわけではない。しかし、負けるときには負ける側にいたいという気がし た。」
という言葉。
米国留学中に日米開戦となり、そののち交換船で日本に帰国するか米国に留まるかの決断を迫られた時の回想です。
決して「お国のために」という流れに迎合するわけではない、しかし、それでも日本で生まれ育った日本人として国が敗れる時にそこにいたいという、著者の思想の原点でもあるこの想いは、戦争を知らない世代である私の心にも何故か響くものがありました。
近い将来、仮に日本が危機的な状況に追い込まれたとして、その時私はどのような想いでいるだろうか...