コミュニティを問いなおす | Archive Redo Blog

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コミュニティを問いなおす―つながり・都市・日本社会の未来 (ちくま新書)/広井 良典
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戦後の日本社会では、経済発展に伴って農村から都市へ人口の大移動が起こりました。

その急激な変化の中で、都市に移り住んだ人は「都市型コミュニティ」を築くかわりに、「会社」と「(核)家族」という閉鎖性の高いコミュニティを築いていきました。

このようなコミュニティの在り方が成立していたのは、国を挙げての経済成長を目標としていたこの時代には、会社や家族の利益を追求することがパイの拡大を通じて社会全体の利益にもつながり、それがまた会社や家族の取り分を増やすという好循環が存在しており、それが言わば”ニッポンというコミュニティ”として機能していたからです。

しかし、経済が成熟化し、会社や家族の在り方が多様化、流動化する現在のような時代においては、”ニッポンというコミュニティ”の求心力が希薄になり、「会社」、「家族」というコミュニティの在り方がかえって個人の孤立化を招いていると著者は指摘します。

本書では、このような日本社会の現状を踏まえた上で、コミュニティというテーマについて都市、空間、グローバル化、社会保障、土地・住宅政策、ケア、価値原理など、様々な観点から多角的に論じています。


非常に深いです。新書の領分を超える充実した内容で読み応えがあります。

コミュニティと言うと、ローカルな視点、すなわち地域コミュニティというイメージで捕えがちですが、それは狭い意味でのコミュニティであり、広義では家族から世界市場まで重層社会における中間的な集団すべてがコミュニティとも言えるんですね。

そんなコミュニティについて、「公-共-私」、「ローカル-ナショナル-グローバル」という2次元の重層構造のマトリックスの中でその位置付けと役割を把握し、今後のコミュニティの在り方や必要となるであろう施策を考察するなど、全般に論に厚みがあります。

厚みがあるがゆえの弊害か、個人的にはコミュニティそのものの議論よりも、むしろコミュニティ形成のベースとなる都市や都市計画についての話の方に興味を持ってしまったのですが...^^;