地図にない道 | Archive Redo Blog

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DBエンジニアのあれこれ備忘録


地図のない道 (新潮文庫)/須賀 敦子
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全く違うところで同じ人物の評判を目(耳)にすると、2倍以上に気になります。

最近、私が気になっていたのは須賀敦子さん。

美しい日本語の文章の書き手として知られる方です。

イタリアでの生活が長かった須賀さんの作品にはやはりイタリアに関するものが多いのですが、この「地図にない道」も須賀さん自身のヴェネツィアでの思い出を綴った随想です。

ヴェネツィアのゲットーを巡り、橋を巡り、島を巡りながら、ユダヤの悲しい歴史、祖母の過ごした大阪の街、若い時を共に過ごしたイタリアの友人たちとの思い出へと思いを馳せる...

記憶の中を自由に行き来しながらも、その旋律は決して破綻することなく読者を自然に誘います。

そこには、俄か仕立ての紀行文とは違い、ふと昔のことに思いを巡らせるということを、長い年月をかけて幾度となく繰り返すことで、熟成してきた想いといいますか、そういう深い味わいも感じられます。