日本辺境論 (新潮新書)/内田 樹- ¥777
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日本人とは何か。
日本人は日本論が好きです。
私も、生粋の思想家の日本論に触れたことはほとんどないものの、日本、あるいは日本人をテーマにした本をたまに読むことがあります。
この本もそういった日本論をテーマとした一冊なんですが、「辺境性」というスキームで日本の特殊性を説明しようというところに、虚を突かれました。
日本はそもそも、自ら文明を切り開いてきた国ではなく、中国という一大文明を世界の中心とする「華夷秩序」と呼ばれる世界の中で、辺境の一民族として歴史を積み重ねてきた国です。
だから、本当の文化や思想は外からやってくるものと思っている。
そのために、常になんとなく文化的に劣っているような気がしている。
立ち戻るべき建国の理念もない。
ゆえに、自国を他国との比較でしか語ることができない。
世界戦略も描くことができない。
ただ、外からやってきたものを自分たちに合うように加工・応用することには長けている。
「辺境」というスキームで考えると、あれもこれもと腑に落ちることがたくさん出てきます。
内容的には丸山眞男、梅棹忠夫、山本七平など、先人たちの考えてきたことをベースに、著者独自の色付けを施したもので、新奇性はそれほどありません。
第2章以降は「辺境性」をキーワードに「学び」、「機」、「日本語」について持論を展開していますが、小難しく、いささかまとまりやつながりを欠いた感もあり、なかなか読み進みません。
しかし、多くの日本人が理解しているはずなのに忘れてしまっている「辺境性」という立ち位置を再確認させるという意味で、第1章だけでも十分に読む価値はあるかと思います。