真田騒動―恩田木工 (新潮文庫)/池波 正太郎- ¥620
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私は池波正太郎さんの「真田太平記」が好きで、先日、信州に行った際には、上田にある「池波正太郎真田太平記館 」にも行ってきました。
しかし、それほど「真田太平記」が好きにもかかわらず、その他一連の”真田もの”と呼ばれる作品群はこれまで読んだことがありませんでした。
というか、恥ずかしながら、この「真田騒動-恩田木工」という本の存在は知っていたのですが、そこに「信濃大名記」、「碁盤の首」、「錯乱」、「真田騒動」、「この父その子」という”真田もの”5作品が収められていることすら知らなかったんです。
本というのは不思議なもので、作品が気に入ってもっと読みたいと思うこともあれば、気に入りすぎてお腹いっぱいになってしまうこともあるんですね。
とまぁ、それはさておき、この「真田騒動」を改めて読もうと思ったのは、単純に「池波正太郎真田太平記記念館」を見学して掻き立てられたというだけのことなんですが、いやいや、これもなかなか面白いですね。
同じ”真田もの”でも「真田太平記」とは違って、真田信幸を藩祖とする信州松代藩を、しかもそれぞれ重なり合う部分もあるものの、ばらばらの時代、人物を扱っているのですが、「真田太平記」のイメージで読んでも全く違和感がなく、続き物のような感覚で読めてしまいました。
直木賞受賞作の「錯乱」や「碁盤の首」などは短編ならではの切れ味も痛快です。
なお、「真田太平記」があまりに壮大で、かつ描いている時代が最も古いがゆえに、その他の”真田もの”は続編、外伝的なイメージで見てしまいますが、執筆順からすると全く逆で、「真田太平記」の方がこれら”真田もの”の集大成的な作品ということになるようです。
だからこそあれだけ深みのある作品に仕上がっているのでしょうね。
そう考えると、「真田太平記」を読んでお腹いっぱいというのも、おかしくはないのかなと思ったりもします。