隠された十字架―法隆寺論 (新潮文庫)/梅原 猛- ¥820
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私たち日本人のほとんどは、法隆寺と言えば、聖徳太子が創建した寺として教えられてきたと思います。
しかし、現在の法隆寺は境内から寺院跡(若草伽藍)が発見されたことにより、創建当時の寺ではなく、ほぼ同じ場所に再建された寺であるという説が定説となっているそうです。
では、再建法隆寺は”誰が”、”いつ”、”何のために”建立したのか...
この疑問に対して、”法隆寺は聖徳太子やこの寺で惨殺され非業の死を遂げた山背大兄皇子ら太子一族の怨霊を鎮めるための鎮魂の寺である。”という大胆な仮説を展開したのが、この梅原猛氏の著書「隠された十字架」です。
法隆寺は非常に謎の多い寺院とされていますが、梅原氏は、法隆寺に関して
- 「日本書紀」、「続日本書紀」にかんする謎
- 「法隆寺資財帳」にかんする謎
- 中門にかんする謎
- 金堂にかんする謎
- 五重塔にかんする謎
- 夢殿にかんする謎
- 聖霊会にかんする謎
これらの謎を深く追求していくうちに強まる法隆寺の死のイメージ、そして、”誰が”という疑問に対しては当時の日本の中央政権において実権を握り、その基盤を固めつつあった藤原氏の影が...
冒頭から斬新な仮説を発見した興奮そのままに熱く論じるその文章は、好き嫌いの分かれるところで、私も若干くどさを感じました。
しかし、1つ1つの事象を積み上げ、総合的に把握し、統一的な意味を見出そうという論証のプロセスが素晴らしく、知的好奇心を大いに刺激される一冊です。
今度、法隆寺をゆっくり訪れてみよう...^^;