オリンピアナチスの森で (集英社文庫 さ 29-7)/沢木 耕太郎- ¥680
- Amazon.co.jp
1936年、ナチスドイツのもとで開かれたベルリンオリンピック。
ナチスが国家の威信を賭けて演出した近代オリンピックの中でも特別な意味を持つ大会です。
この「オリンピア ナチスの森で」は、この大会を撮影し、オリンピック記録映画の最高傑作と言われる「オリンピア」を完成させたレニ・リーフェンシュタール、そして大会に参加した多くの日本選手の活躍や人生を追い、ベルリンオリンピックを描いたノン・フィクションです。
日本からベルリンまでの2週間以上の長旅を経て本番に挑む日本選手。
新聞とラジオの実況でしか知ることのできなかった大会の模様。
競技環境、記録の水準、技術。
棒高跳びや三段跳びなど、今では考えられないような種目での日本勢の活躍。
ファシズム、全体主義が台頭しつつある当時の世界情勢。
72年も前のことですので当たり前といえば当たり前ですが、現在のオリンピックとあらゆる点で趣が異なるのが、読んでいて非常に興味深かったです。
そして、ナチスドイツのもとで行われたこと。
ベルリンの街に溢れる「ハイル・ヒトラー!」の叫び声に他国の選手たちはうんざりだったようですが、反ユダヤ政策など、開催を危うくさせる火種を抱えながらも、ナチスはうまく体裁を取り繕い、大会そのものは成功裡に収められたようです。
このベルリン大会の話を読んで、どうしても連想してしまうのは、現在、大会真っ只中の北京オリンピックです。
しかし、共産党一党支配、チベット問題など、ある意味、ベルリン大会と政治的背景において類似点を持つこの大会も、「加油!加油!」の大合唱に多少の違和感を覚えながらも、きっと成功に終わるのでしょう。
ベルリン大会の頃ほど、どこで開催されたのかという印象の残らない近年のオリンピックの風潮から考えれば、なおさらです。
このオリンピックの後、中国がどういう方向に進むのかは知りませんが...