モノづくり幻想が日本経済をダメにする―変わる世界、変わらない日本/野口 悠紀雄- ¥1,680
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刺激的なタイトルの本ですが、このところ私が一番気になっている問題なので読んでみました。
一言で言うと非常に読後感の悪い本でした。
(本の出来が悪いからではありません。)
この本の主題は、従来の「モノづくり」中心の従来の産業構造のままでは、日本はグローバル経済の中で取り残されてしまうということです。
従来型の製造業中心の産業構造のままでは、安価で豊富な労働力を持つ新興国との競争にさらされ、労働者の所得は増えません。
技術力という優位性もいつまで維持し続けられるかわかりません。
このままだと世界経済の中での存在感は薄れていくばかりです。
この状況を打破するには、新興国にできないような高度な経済活動を行えるよう産業構造を変革し、また、海外からの投資を積極的に受け入れ、経済を活性化しなければなりません。
しかし、金融緩和、円安、中国の経済発展などがもたらした昨今のいざなぎ景気超えと言われる景気回復は、そういった危機感を薄めてしまいました。
このような現状に対して著者は強い危機感を訴えています。
この本は「週刊ダイヤモンド」に連載されていた「超整理日記」をまとめたものなのですが、それだけに日本の社会・経済の問題点が凝縮されており、読み進めば読み進むほど暗澹たる気持ちになります。
株価が下がり続けているこの時期に読んだのでなおさらです。
日本株の昨年の高値からの下落率はサブプライムローン問題の震源地であるアメリカの倍近い数字です。
これだけ日本の株式市場が脆弱なのは、世界経済の変化への対応の遅さが改めて意識され始めたからではないかと思います。
さすがにこれだけ株価が急落して、政界や財界からもそういう声がチラホラと聞こえ始めました。
しかし、今の政治は...ご承知の通りの有様です。
この閉塞感を打ち破るには黒船来襲並みの危機感と明治維新並みの変革が必要かもしれませんね。