生物と無生物のあいだ (講談社現代新書 1891)/福岡 伸一- ¥777
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”生命とは自己複製するシステムである。”
DNAの発見は生命(生物)をそう定義づけました。
しかし、DNAはウイルスにも存在します。
ウイルスは単細胞生物よりもはるかに小さく、画一的で個体差もなく、呼吸も栄養摂取も排泄も行いません。
超ミクロの機械のような構造を持つ物質に近い存在です。
これを生物とするか無生物とするか...
筆者はウイルスは生物とは定義しないという立場をとっています。
では、自己複製システム以外に生命を定義づける要素とは一体何なのでしょう?
筆者はそれを”動的平衡”だとしています。
”生命とは動的平衡にある流れである。”
生命活動は、熱力学的なプロセスとして捉えると、エントロピー増大の法則にしたがい、やがて熱力学的平衡状態(すなわち死)へと向かうはずです。
しかし、生物は長い期間、熱力学的平衡状態には陥りません。
それは、生命は秩序を維持するために秩序が崩壊する前に自ら秩序を壊し、再構築を繰り返しているからです。
生命活動は不可逆的な時間の流れの中で、成長し、秩序の破壊と再構築を繰り返しながら、どの時点においても動的平衡状態を保っている...そういう存在なのです。
この本では、前半ではDNA研究の歴史について、後半では筆者自身の研究成果も交えながら動的平衡という生命観について語られています。
後半は一瞬どこへ向かうのか見失いかけますが、最後の最後でカッチリとつながります。
そして、筆者がそこから得た結論とは...
非常に面白い本です。
テーマ自体も面白いのですが、各章の冒頭の詩的な描写、物語的な話の展開など、「この人は作家志望なのか?」と思わせるような優れた文章で、ページがどんどん進みます。(若干くど過ぎる部分はナナメ読みしましたが^^;)