日本経済の現状を語るとき、”失われた30年”という言葉がよく使われますが、もうこの期間の半ばくらいからでしょうか、政治家が”成長”、”成長”と繰り返すたびにため息が出るようになりました。
政治家が使う”成長”という言葉には、いまだに昭和の高度成長期の成功体験が根強く残っており、その幻想に縋っているようなニュアンスを強く感じますが、個別の産業分野で成長を目指すのはいいとしても、日本全体としてかつての高度成長の再来を期待するような昭和的な思考はもう捨ててもらいたいという思いが年々強まってきています。
この本は、そんな古い成功モデルから脱却し、”成長”から”成熟”へ、持続可能な福祉社会、そして豊かな定常文明という日本像への転換のビジョンを描くことを主題にしており、これまでそういったテーマの著作を多く出してきた著者が、改めて日本の未来像を描き出したものとなっています。
日本の伝統的な自然観やアミニズム文化という視点を取り入れ、そこに可能性を見出そうとしているところも興味深かったですが、日本だけの話ではなく、地球全体を視野に入れた考察もされており、私がぼんやりと考えていたことを論理的かつ多角的に補完してくれる内容でとても勉強になりました。
地球環境の有限性ということを考えると、やはり限りなく拡大・成長を志向し続けるのは不可能であり、定常文明への転換というのは必然かと思いますが、日本にはそれを実践できる素養もあるし、世界のロールモデルになれる可能性もあると思います。
方法論としてはいろいろ考えられるとは思いますが、方向性としてはこのような考え方が日本の目指すべき未来像のスタンダードとして広まっていき、国民全体のコンセンサスを得られれば、明るい未来が見えてくる、そんな気がします。
