いわゆる街の不動産屋が評価しない物件ばかりを取り上げている。


その評価基準は、「改装OK」であったり、「眺望」であったり、「倉庫っぽい」ことであったり…。

要するに、多様なライフスタイルに立った視点から捉えようとしているのだ。


例えば、価値の見出し方がこうだ。以下に本文の一部を抜粋する。


『オフィスビルにとって南側の窓というのは、室温が上がりすぎたり、パソコンのモニタに光が映り込むことを嫌い、小さく設けられているものだ。その例に漏れず、このビルも大通りに面した北側の窓は比較的大きく、絶景の見える南側の窓は必要最低限の採光しかなかった。でも、その閉じた壁の向こうにポテンシャルが眠っていた。オフィスには不要な眺望も、住宅にとっては一変して宝物になるのだ。』

本書で紹介している物件の中には、ごく少数の人しか振り向かないようないわゆる“ゲテモノ”物件も確かにあるが、それでも求めている人がいるのは事実なのだから、従来の不動産選びの基準を再考させられる。


また、従来の不動産と建築の関係は近いようで遠く、相異なる論理で成り立っていた。

しかし、物件のコンバージョンやリノベーションなどを通じて建築が不動産の価値論理を揺さぶるように介入しているのは、建築ができる領域を広げているようでとても面白いと思った。


僕も建築出身の一不動産マンとしてこのような新たなモデルを提示していきたい。



日本では近年、郊外に大型店が次々とできて、地域に利便性の向上や雇用の増加というメリットをもたらしている。


しかし、一方でこうした大型店が地元のスーパーや個人商店を閉店に追い込み、また採算が取れなくなれば即撤退するため閉店後の地域経済が衰退してしまうといったデメリットも危惧されている。


こうした現状に対して、同様な問題を抱えるアメリカの事例を紹介しながら対策を考えようというのが本書の趣旨である。


アメリカの事例では、ウォルマートを取り巻く環境や連邦・州・地方政府が行っている規制について言及されている。


結局、問題を解決しようとするにはルールをしっかりつくって、規制(コンとロール)する方向に持っていくべきだというのが筆者の主張であった。


規制したらそれなりの効果が表れるのは当然で、例えば建物の高さや容積率を規制したらある程度秩序が保たれるのと一緒。


もう少しそれ以外の解決策についても踏み込んでほしかった。

でもディベロッパーは法的制限があればそのギリギリまで計画するのだから、規制を強化するのも一理あるのだけれども。


ただ、大型店が競合して立地することによる負の影響について数値で示しているのは、大型店が地域によくないという一般論を検証している意味で興味深く、また説得力があった。


まちづくり3法も改正され、これから郊外の経済がどのようになっているか注視していきたい。



昨今の東京と横浜における景観の移り変わりに対して、主に建築的視点から述べられている。


特に学生時代に建築学を専攻し、現在不動産会社で勤めている僕には、

次の文章が一番印象に残った。少々長いが引用する。


『どうすればいいのか、と立ち止まって考える暇もない速度で東京の街の解体が進んでいる。


…今行われている解体は、誰かがそれを決定しその決定に従って解体と「再開発」が粛々と進行している。誰かとは三菱地所だったり、三井不動産だったり、森ビルだったり、…する。三菱地所は丸の内の地主だし、三井不動産は日本橋の地主なので、その意味において、俺の土地には俺の思うようなものを建てるんだという意識しか見えない。その暴力的な意識をオブラートに包むために安藤忠雄ら著名建築家の固有名が利用されている。このままでは世界の大都市間の競争に敗れてしまうをディヴェロッパーたちは口を揃える。なぜ六本木ヒルズに「次郎ずし」がなければならないのか。数寄屋橋の不二家の地下にひっそりとあるだけではいけないのか。


…大規模ビルの意匠を著名建築家に委ねることで、免罪符を得ようとするのと同じようにショッピングセンターに入る店さえも老舗を選ぶことで、ビルに箔をつけているだけだ。再開発をすべて悪と言いたいわけではない。以前よりも良くなればそれは良いことだと思う。でも、どのように良くなるのかという議論において、容積率を上げ、高層化を図るといった「開発」の原則が他の何よりも優先され、「再開発」しなければならない理由は、「再開発」が決定してから付け加えられるだけだ。』


僕自身も同じ思いを抱いている。


しかも、こうしたことは批判するのは容易であるはものの、『容積率を上げ、高層化を図るといった「開発」の原則』に対する代案はとなると途端にトーンが落ちてしまう。


要するに、現状に抗う提案・実現が非常に難しいのだ。


仮に抗う提案があるとすれば、容積率や高さを規制をする方向に誘導することが一番手っ取り早いのだろうが、それだけでは高さが揃った味気ない建物が並んでしまうことであろう。


低層でも空間がよければ高層よりも価値があることを定量化できるような物差しがないと、今の流れを変えることは容易ではないのか?


しばらくは不動産の論理を学びつつ、いつか容積率MAX、高さMAXといった制限ギリギリだけが脳ではない建物を実現してみたい。