「…以上だ。各員警戒をしておけ…」
特例の軍事会議を済ませたギルは机に置いてあった煙草を押しつぶした。その煙草はキールに貰った煙草であったのは言わずもがなであった。
「…そういや、ギルお前に錬金術教えてもらったって人は…マジであの…」
「そうだな…五大英雄のアベル・イプシロンだ…」
「…あの噂は本当らしいな…」
キールは執務室に設けられた一人掛けのソファーに浅く腰掛けてグラスを片手に葡萄酒を飲んでいる。
ギルはリクライニングシートの椅子にもたれ窓の外にある澄み切った青空を眺めた。その表情から憂いを帯びた顔が露わであった。
「…あの戦争から10年だっけか?」
「思い出すだけで反吐が出る。」
「わり…」
キールはグラスをテーブルに置き煙草を吸った。普段人を化かすキールの顔から笑いはなかった。
「気にするな……キール、今回の騒動どうみる?」
「…まず一人で脱獄は無理だろうな。」
「……続けて構わんよ。」
ギルはこめかみに人差し指を添え発言を続けるように言った。
「今現在で科学の最高地点に存在する第八研究機関、略称『研究所』…稀代の天才科学者ツクモがわざわざ最下層にドグマ建設してそこにあの英雄クロコをぶっ込んだんだ…んで、お前なら…わかるんだろ?その鍵を開けた人物ってのが」
「…」
キールは紫煙を吐いた後にギルを見ずに再び煙草を吸い始めた。確信はないが大体の事は分かっていた。
「俺は頭はよくねぇ、だけど…ツクモを超える存在は彼女しかいねえだろ?」
「………キール下がれ」
「………了解だ」
不服そうな顔をしたキールはゆっくりと立ち上がって煙を吐きながら扉に向かった。
そしてドアノブに手をかけた。ふと動きを止め振り返らず今なお