ヴァルキリアス帝国 帝都
早朝から、司令部は慌ただしかった。帝都から支給されるはずの穀物が前に比べ考えられないくらいに高騰していた。そして西部で突如武装化した過激派民族が蜂起し少数民族を虐殺という手段を取っていた。
「狸爺、今までにないくらい事は深刻だぞ」
「メアリーよ、それくらいわかっておるわ。しかし、何故今蜂起したのだろうな」
「大体はわかる、だが奴等のやることを我々は見逃すことは出来ないぞ!!」
煙草をふかす軍人気質で灰色の髭が逞しく見える厳めしい将軍気質の老人が紫煙をはいて紅髪のメアリーに言った。
司令部で椅子に座り地図を見て悩むロンメルに部隊編成をせんとばかりに机を叩くメアリー。
「今、タスクフォース001が動き始めた…ちと、待っておれ」
「タスクフォース001…ああ、あの新入りがそんなに躍進するものか?」
新入りとは昨春に軍隊に奉職したアレンと名乗る青年であった。その活躍は軍に響きわたり緑狼とロンメルの目に留まり特殊機動部隊タスクフォース001のキャプテンに抜擢されたのである。
「メアリーよ、タスクフォースに階級なぞないと言ったではないか」
「そんなことは知っている!!今回は戦車部隊は殆ど使えない…いや、使えるな。」
困り果てていたメアリーの顔が一気に明るくなった。その視点の先にはある場所を見つめていた。
「よし、戦車部隊全員とレーンジャーも全員来い、活路は見えた。狸爺、今回は私に指揮を委ねてはどうだ?」
メアリーの表情を見てロンメルは豪快な笑いで返した。拡声器を使い外で編成待ちの部隊に今し方待てと言った。
「ハハハハ!勝てるか?」
「ああ、勝てるさ。早く終わらせたいものだ…」
「…血の繋がりは無くても…」
ロンメルがいいかけた言葉をメアリーは無理矢理自分なりに紡いだ。
「血の繋がりは無くても私の姉上は姉上だ。だから私は姉上に全てを捧げるさ。」
メアリーの顔は今までにないくらい引き締まった顔であった。
ロンメルはそれを見て小さく呟いた。
「ここにも、頑固者がおるな…。」
その顔は誇らしげな笑顔であった。
同時刻 帝都執務室
「小麦が…こんなに…特に南部はこれまでにない凶作…」
執務室で穀物時給がデータ化された数値を見つめたルナはアホ毛が一気に萎びれた。寝不足と過労も重なって目の下に隈がハッキリと分かる位体調は芳しくなかった。
「入るぞ」
「どうぞ…」
ドアをノックする音がありルナは疲労仕切った表情でドアを見つめた。
「ルナ、また無茶しているのか…」
中途半端な長さの白髪が似つかわしいが幾度となく戦場を乗り越えた顔をした青年が入ってきた。
「これも…帝国の平和の為です…緑狼…」
ルナは目を閉じそう答えた。建国当初から揺るぎなき決意。自分の役目、つまり己の生を成して帝国陛下として華やかな人生を送りたい、が世界はそう優しいものではなかった。
「……馬鹿野郎が…」
言葉が終わる間際ルナの頭を緑狼は撫でた。その手から優しい緑の光がルナの頭を包み込んだ。それは暖かな、或いはルナの全てを包み込もうとせんばかりにしようとする希望の光でもあった…かもしれない。
「ありがとうございます…」
「…見れないと思えば…」
「ごめんなさい…」
ルナは、目一杯に涙を堪えて机越しに緑狼に抱きついた。ルナにとって緑狼は自分の存在を認めてくれた数少ない心を許せる人である。
「…安心しろ…皆がお前を見捨てても私だけはお前についているさ…だから、泣くな…」
「緑狼…」
二人は既に結婚している。だが、互いの意を汲み籍を入れない事にした。
「まったく…」
「んっ……!?」
胸元でむせび泣くルナの頭を撫でた。そして、ルナの唇と自分の唇を重ねた。
柔らかくほんのりと莓の香りがする唇だった。
「少しは元気になったか?」
「はい…//」
顔を赤らめたルナは上目遣いで緑狼を見つめた。暫く時間が流れた。だが、時は許さなかった。慌ただしく廊下を走ってくる兵の息がしっかりと聞こえてきたのを確認した緑狼はルナを椅子座らせドアに視線を向けた。
「ハァハァ…こここ、皇帝陛下、並びに参謀長殿た、大変でございます!!」
「どうしたのですか!?」
兵の慌てぶりにルナは目を丸めた。緑狼は何かを感じ取っていた。
「き、来ました!え、英雄が!きょ共和国の英雄が!!」
その伝えは司令部にも伝わっていた。
