植物体における水の流れ
水は生命の維持にとって不可欠である。水分子の基本的な性質は植物の生存にうまく利用されている。第一に、水分子は構造的に四面体をなし、2個の水素電子のプラス電荷と、1個の酸素電子のマイナス電荷とがつながっている。水素原子のプラス電荷がやや勝っているので、水分子の水素原子と弱いマイナス電荷を持つフッ素、酸素、窒素原子との間に水素結合を形成する。この水素結合が核酸やタンパク質の構造上極めて重要な役割を演じている。第二に、双極子である水分子が高い誘電率をもっているので、電解質を溶かしやすい性質がある。第三に、水は比熱が大きいのでその温度変化には大量の熱の出入りを必要とする。したがって、水を大量に含む生細胞は熱的に安定している。第四に、水は蒸発のため大きい潜熱をもっている。このため、水の蒸発は植物に対して冷却効果をもっている。第五に、水は大きい表面張力と凝集力をもつため、導管を通る水柱は長く引っ張られても水分子間は切断されない。第六に、水は4℃で密度が最大になるため氷よりも重く、このため土壌が凍結しても中の根は氷によりあまり傷つけられずに吸水できる。
成熟した植物細胞はその容積の大部分を占める液胞液の浸透圧に基づく拡散圧欠損によって水を吸収して生長し、浸透圧とは膨圧が平衡し、拡散圧欠損が0に達するまで吸水を続ける。植物体に対する水の供給は、大部分が根によって土壌中から行われる。導管あるいは仮導管を通って上昇し、その過程で水は植物体の各部分に供給される。上昇した水は最終的に葉から蒸発し、この蒸発によって植物体の温度の調節も行われる。
つまり、蒸散は、葉の表皮にある気候に接した内部の葉肉組織の細胞表面から水が水蒸気として失われ、これによって隣接する細胞から水を引き出す。この結果、葉脈、葉柄の導管、そしてこれらに連なった茎の導管から水を引き上げ、根の導管、柔組織、そして最後に表皮、根毛に吸引がおよび、これによって土壌中の水を吸収するということになる。