『ちょ、な、急になんだ?』
『見張りのくせになんだ?お前は…敵を引き入れてんじゃねー』
『は?敵?違うぞ?この人達は谷前に揃った手練達とは全く別の集団だ…どうも迷い込んだ子供を探しに来た母親達らしい…それにあの長生果競り事件の被害者でもある…』
『なんだって?それは…大変失礼をした…あの競り事件のせいで我々も辛酸を舐めた。武林の統一など町人にはどうでも良い。魔教であれ正道であれ客は客なのだ…それをあの事件の後、人々は碧水を避けていく。交通の要所であった我々には人が離れる事ほどの死活はない。しかし、あの事件の被害者とは…もしかして亡くなられた掌門のお身内の?』
『あ、はい…私は父が…』
彩彩は死の真相を既に知りながら、表向き父を競りで亡くしたことにしていた。
されど風千衛の名は蕭白の触書により長生果を巡る争いの渦中にあり私欲で身を滅ぼした事は周知されていた。
『お父上が…そうですか…どちらの掌門様で?』
『ねぇ、そんな事はどうでも良いわ今はこの蝶瑶さんの治療が先よ』
『あ、ああ。本当に申し訳なかった』
明らかに武人らしからぬ商人風情の男は丁寧に謝罪した。
『その武器を私に渡して、そんなものを振り回したら危ないでしょう?蝶瑶さん?大丈夫?腕から血が…止血をしてから雪蘭に傷を治して貰いましょう』
『あ、いえ…雪蘭様もまだ体力が戻っておりません…私に無駄に力を使うのは…』
『何を言ってるの!ねぇ、ちょっと待って…これ…体中アザだらけじゃないの…』
無理やり蝶瑶の袖を捲り上げる。
『……まぁ、少し…』
『こ、コイツが暴れるからだろ』
『随分と手荒いわね…碧水の人ってそんなに野蛮だった?』
『なんだと?』
背後から続々と男達が集まってくる。
『おい、なんだ?どうした?』
『それより、なぁ今治癒と言ったか?もしかしてその娘…噂に聞く上官秋月の娘では?確か武芸、治癒、毒薬草に詳しいと聞く…この近くに秋月の住まいがあるとか無いとか』
『だったら何?さっきから何を論点ずれた話をしているの?目の前に自分が傷を負わせた相手がいて何故治療しようとしないの?長生果の被害者の名前にすがりついてる者達の集まりってだけじゃない』
『なっ…』
『なによ!』
『し、春花様…あの…火に油を…』
蝶瑶は慌てて春花を止める
『…春花??春花とは上官秋月の妻の名前じゃないか!』
周囲はざわついた
『た、確かに此処はあの傅楼が治めた伝奇谷…いてもおかしくない…』
『んもう!だからなんだって言うの?肩書きがなんでも私は春花。それ以下でも以上でもない。貴方は大工で親方そっちは職人。貴方は宝飾。貴方は生地問屋…で、何があるの?あら、あなたいい体してる。ちょっと此処で脱いで見なさいよ…』
『なななっなんとはしたない』
『はしたないなんて…失礼ね。その衣を剥ぎ取ればみんな母親から生まれてきた時と同じ生身の体よ?ばかばかしい。そんな事よりも早く武器を渡して蝶瑶さんの治療と息子の所に連れて行ってちょうだい!あと、彩彩さんと冷凝さんは私を運んできたから疲れてるのお茶を頂きたいわ』
『春花殿…今そんな…』
嗜めようとする冷凝の衣の袖を彩彩が引き首を振る
『……』
『此処は春花さんに任せた方が良いわ…』
『……』
『私に武器を渡したってねえ、使い方なんか知るはずないわ。だって私の武器はこの口だもの!』
『そうだ、確か噂には上官秋月の妻は元はあの鳳鳴山荘盟主の許嫁でありながら武芸もできぬ後ろ盾の実家も失くした女子だったと聞いたぞ』
『……』
『そうよ、だから怖がる必要はないわ…とにかくさっさとして頂戴!』
『は、はい…』
その場にいた町人達は丸め込まれ春花の言う通り武器を手渡す。
『だが、もしもあの谷前に集合した者達が襲ってきた場合に備えて、誰か1人を人質にしたい。まぁ言わば保険だ』
『はぁぁあ、分かったわ。じゃあ…』
『私が行きます』
春花の前に出た蝶瑶
『蝶瑶さんはダメ!貴方は怪我をしているから。彩彩さんと冷凝さんは疲れてる。雪蘭も傷だらけ…だったら?私しかいないでしょ。秋月は私に弱いから私の言う事を聞く。なら私が一番適任でしょ?』
体の2倍はある男達に囲まれながらも果敢に講釈を講じる春花。
『……ならよしお前はこちらに。で、子供はこの下の階にいる。』
『そ?じゃあ、皆さんこの人達にお茶でも頂いて、もう帰って良いわ。ありがとう』
手を振る。
『母上…』
『心配しないで桃雨を見つけたら抜け出すから…あと、外にいるお父様達ももう帰るように伝えて。色々と行き違いがあるみたいだし』
『それはなりません…私が残ります』
『蝶瑶さん…』
『なかなか良い心掛けだな翼星主…』
『秋月様っ!』
『父上!』
『あなた!…え、白まで?』
『雪蘭っっ』
『清流…あなたどうして此処へ?』
『どうして此処へって…雪を探しに決まってるじゃ無いか』
『待て待て待て…まさかとは思うがこれは…』
『あれは鳳鳴山荘前盟主の蕭白様だ…』
『な、なんだ…上官秋月に蕭白…おい、薬屋お前詳しいだろ?八仙によく行くじゃないか』
『ああ、確か八仙の朴の謀りで力を失った秋月は今すっかり只人になったと聞いた。ん?おい、あれは現盟主清流様じゃないか。あ、そうか。清流様は蕭家に養子に入って…それでその後結婚した』
『結婚?誰と?』
『幼馴染で…』
『幼馴染で?』
『……あ、いや…まさか』
『なんだよ?言えよ』
『いや、、相手が恐らくあの秋月の娘と記憶する』
薬屋の言葉に声を失う碧水の者達。
『じゃ、じゃあ…』
『何をこそこそと…お前たちこそ町人に化けた妖か?ならば手加減はせぬが良いか?』
秋月の一瞥で漂う冷気はその場にいた人々を恐怖に誘った。
その波動は地中を這い回り避け目から沸き立つ様に冷ややかで背筋が凍る様に恐ろしく見えた。
青天に霹靂8へつづく
はい。大家好!←かぶれ中
すみませんね、毎日毎日春花秋月で動画作ったり、李宏毅君、趙露思ちゃんの2人のインタビュー動画に字幕つけたりと本当に忙しい日々。。充実よーっ![ちゅー](https://stat100.ameba.jp/blog/ucs/img/char/char3/046.png)
![ちゅー](https://stat100.ameba.jp/blog/ucs/img/char/char3/046.png)
はい、今日も動画作りながら書きました。また後から加筆します!んじゃんにゆー。