ロシア北部の小さな町で、自動車修理工場を経営しているコーリャ。住み慣れた家で、妻リリア、先妻との息子ロマと生活していたが、市長のヴァディムが彼の土地を再開発の為、買収しようとする。権力を武器に自分の土地を容赦なく奪おうとするヴァディムに激しい怒りを覚えたコーリャは、モスクワから友人の弁護士ディーマを呼んで市長の悪事を暴露して徹底抗戦に挑む。やがて両者の攻防は激化し、思わぬ事態を引き起こす。

 

 

 

 

 

 

こちらは2014年制作の ロシア 映画になります カチンコ

 

映画 「父、帰る」 の アンドレイ ズビャギンツェフ 監督の作品でありまして、過疎化

 

する港町に暮らす 主人公 コーリャ と、年頃の息子と、後妻の妻の家族に訪れる、悲

 

劇を描いた物語です

 

 

 

 

内容に大きく関わる、幾つかの事に触れないといけないのですが、まず原題の 「リヴ

 

ァイアサン」 というタイトルの意味ですが、神話上の生物であり海の化身であります 

 

劇中、度々登場するキリスト教と、旧約聖書の中の 「ヨブ記」  信仰の厚いヨブとい

 

う男を試すために、サタンが、神をそそのかして命を奪う以外のありとあらゆる不幸

 

をヨブに与え、最後の試練として「リヴァイアサン」 との対決を促すというお話 

 

 

 

 

トマス・ホッブズ という政治哲学者が書いた「リヴァイアサン」における「人間は

 

自然の状態でおかれたままでは争いを起こしてしまう生き物とし、その混乱状態を避

 

けるために 個人は国家 に権利を譲渡し、社会契約を結んだと定義付けた」 という思

 

想の二つから取ったタイトルだそうであります

 

 

 

 

そして、ストーリーの元となった事件がアメリカで起こった「ギルドーザー事件」と

 

いう事件がありまして、「ギルドーザー事件」とは、土地の再開発に反対したマービ

 

ン・ヒーメイヤーという男が、運命に翻弄され、ブルドーザーで市役所、工場、新聞

 

社、市長自宅などを破壊した末に内から溶接された車内で自殺するという悲劇的な事

 

件ですが、映画ではそのような破壊的な行為は行われません 炎

 

 

 

 

荒々しく打ち寄せる波の、海岸沿いの町 空は常に厚い雲に覆われているような場所

 

そんな風景の中で、コーリャ という男と、家族が、神の作った 「法」 と、人間の作

 

った 「法」の狭間で追い詰められ、崩壊して行く様が、静かでいて、緊張感のある カ

 

メラ で描かれます 人物描写も見事なのですが、情景だけで物語る部分が印象的でし

 

た  

 

 

 

 

コーリャ の家が、遂に取り壊される場面では、カメラは家の中からの目線で捉えてい

 

て、パワーショベルが今まで暮らしていた部屋を、まるで悪魔の腕のように壊してい

 

く様は、何とも言い難い悲しみと、破壊の暴力 そして人間個人の無力さを思い知ら

 

されるシーンですし、海岸に打ち上げられたクジラの、骨だけになった屍のかたわら

 

に座り込む人間を写した画などは、まるで、ヨブ記 の リヴァイアサン すら、現代で

 

は死に絶えた、と神が嘆いているかのようなショットであります 十字架

 

 

 

 

ラスト、教会の信者の前で司祭が、キリスト教を語るシーンが割と長めに流れるので

 

すが、ここまで物語を観た上で、このシーンを観ると、語っている事がまるで、全て

 

綺麗事で、おとぎ話を聞かせれているような気になってしまうのです 監督は人間の

 

愚かさや、業 そして神というものまでも、人間の定めた法の中に取り込んでしまっ

 

たのではないか、、、と嘆いているかのように感じてしまうのでした ドクロ

 

 

 

 

現在の ロシア という国、そして世界の現在を俯瞰で見ているような作品であります

 

そして、また黒い波が、海岸に打ち寄せては引いていくのであります

 

現代 ロシア を写した力強い映画となっておりますので、興味が湧いた方がおられれ

 

ば、ご覧になってみてはいかがでしょうか はてなマーク

 

では、また次回ですよ~!