前科4犯の西口 彰(にしぐち あきら、1925年12月14日、キリスト教カトリックの家庭に生まれる)が1963年10月に2人を殺害し、その後、1964年1月3日に逮捕されるまで逃亡を続け、大学教授や弁護士などを騙って計5人を殺害し、計80万円を詐取した 1964年逮捕され、1970年 福岡拘置所で死刑執行 

享年44歳

 

 

 

 

 

 

アメブロで公開停止になっていた過去記事を訂正しての再アップ版です。 ドンッ

 

 

こちらは1979年制作の 松竹映画  松  です (140分)

 

昭和38年に起きた 西口彰事件 を題材にした小説の映画化で、実際の事件をなぞって

 

いるものの、人物の名前 劇中では 榎津巌 と改名されていますし、事件の順序や逮捕

 

に至る過程 (他、諸々) には大きなアレンジが加えられています。殺害された人数

 

や、人物像、所在地 等は事実に沿っております。  メモ

 

 

 

 

もそも、私が実録物が好きになったきっかけは、今思い返すと この映画に出会った

 

事が大きかったんだな~と再確認いたしました。本作を最初に観たのは、私が中学生

 

だった頃で、このような作品が 「〇〇ロードショー」 という、夜9時からのテレビで

 

よく放送されていて。そこで 「鬼畜」や「あゝ野麦峠」 「金田一耕助シリーズ」 等

 

に出会ったのでした。

 

その中でもこの 「復讐するは我にあり」 は当時の私に、ガツン ビックリマーク と響いたのを憶え

 

ています。 緒形拳 演じるアンチヒーローに、何故か中学生の私は魅せられてしま

 

ったのでした

 

 

 

 

Movie  専売公社の集金係2名を殺害し集金の金を奪った榎津は詐欺を繰り返しなが

 

ら逃走を続ける事に 自宅には病身の母親と敬虔なクリスチャンの父親が旅館を

 

経営し 榎津の妻子とともに暮らしています。 妻の加津子は、義父である鎮雄に心酔

 

し、榎津は2人の関係を疑っています。 警察が専売公社雇人殺しの容疑で榎津を全

 

国指名手配にするなか、榎津は裁判所で被告人の家族に近づき、弁護士を装って保

 

釈金を預かる手口で詐欺を働き、仕事の依頼と称して老弁護士に近づき、殺害して金

 

品を奪って逃げ続けます。 

 

 

 

 

浜松の旅館に大学教授を装って宿泊し、宿の女将ハルと懇ろになる ハルの母親は元

 

殺人犯で収監された経歴を持ちハルの情夫で旅館のオーナーでもある男の機嫌を取り

 

ながら、競艇に明け暮れる日々を送っていました ある日、榎津とハルが映画館へ

 

入ったところ、館内の映像ニュースで榎津の指名手配が流れハルは榎津の正体を知る

 

事になります。

 

榎津に惚れていたハルは榎津を匿い、逃走を手助けしようとします。それを知ったハ

 

ルの母親は榎津を競艇に誘い、当てた金を榎津に渡して、自分たちの前から消えてく

 

れるよう頼みます 榎津はハルと母親を殺害し、質屋を旅館に呼んで二人の所持品を

 

売り払ってしまいます  

 

 

 

 

榎津を以前客に取ったことのある売春婦が、質屋と一緒にいる榎津を目撃し、指名手

 

配の犯人であることに気づき、警察に通報 榎津は逮捕され、死刑宣告へと、、、 

 

面会に来た父親の鎮雄は、榎津が教会から破門されたこと、自らも責任を取って脱会

 

したことを伝えますが、榎津は 「父親を殺すべきだった」 と語ります 処刑後、榎津

 

の遺骨を抱いた妻の加津子と鎮雄は、山頂から空に向かって散骨するのでした  

 

 

 

 

とにかく、オープニングの 薄暗い山道を警察車両が列をなして進んで来る場面から、

 

ラストの空に向かっての散骨場面まで えも言えぬ雰囲気と緊張感が張りつめた作品

 

で見入ってしまいます。 主人公 榎津巌 を演じる 緒形拳の圧倒的存在感 敬虔なクリ

 

スチャンの父親を 三國連太郎 その妻に ミヤコ蝶々 巌の父を信仰的に慕う 巌の妻に

 

倍賞美津子 榎津の逃亡の宿先の女将ハルに 小川真由美 以前に人殺しをした過去

 

をもつハルの母親に清川虹子 と、この主要人物達もある種の ドス黒い闇 を抱えてい

 

て、それもかなりの深さであります。

 

 

 

 

 

 映画は逮捕された榎津巌の回想と、供述によって展開していきます そもそも榎津の

 

人間形成が如何にして行われたのかですが、巌は長崎の五島列島の出身で、一家は

 

熱心なカトリック信者でした 戦時中、軍に船を供出するようにカトリック信者だけ

 

に命令され、網元をしていた父親が軍人の前で、神ではなく天皇陛下への忠誠を誓わ

 

されるという場面を目撃します 暴力を振るわれ屈する父の姿 それは少年の巌にと

 

っては神への裏切りであり、欺瞞に見えた事でしょう それにも関わらず父はその後

 

も敬虔な信者として神への信仰を口にし、篤信家として巌の目の前に大きく存在して

 

いました 

 

 

 

 

そんな虚構の世界を忌み嫌った​​​​​巌 父と息子、この二人の確執、神への信仰そして

 

欺瞞、愛憎といった人間の業、人間であるがゆえの原罪にまで迫る物語は、他の登場

 

人物にも通じるものがあります。 個人的には様々なシーンが印象深いのですが、特に

 

印象的なのが、最初の殺人の泥臭さと生々しさ ハルの母に身元がばれ、互いに殺人

 

の経験のある二人が語り合う場面

 

 

 

 

そこでの母親の言葉 「なぜ人を殺す?あんたは本当に殺したい人間を殺していないね 

 

私は本当に殺したい人間を殺したから悔いはないよ」 と詰められる場面の緊張感 

 

ハルの首に手をかけ、一度は力を緩めるもののハルの顔を凝視しながら、再び首を絞

 

めて殺害 その後、愛情があった為か失禁したハルを拭いてあげる場面 そして河島

 

弁護士宅での押入れの扉、、、ドア 等々

 

 

 

 

本作のタイトルは謎めいていますが、これは聖書の一文からの引用で 聖書 神からの

 

言葉だそうです 「愛する者よ、自ら復讐してはならない 悪に対して悪で報いてはな

 

らない 主いい給う 復讐するは我にあり 悪を行なった者に対する復讐は神がおこ

 

なう」という意味です。 実際の 西口彰がそこまでの心理的な衝動があったのかは謎

 

ですが、この映画の後半での面会シーンで榎津巌の動機の手掛かりが、垣間見える

 

事になっています。

 

 

 

 

個人的にはやはり、虚栄心とお金 殺人を犯す際の快楽とその反動からの性欲 逃亡

 

のスリルと別人格になる魅力 そういったものが入り混じった心理でしか生きられな

 

かったのかも知れません。 それに同化してしまう私の欲望 そこに理由も無く、強

 

く惹かれてしまう映画の1本なのでありました まだご覧になっておられない方もこ

 

の機会に 是非 観て頂ければと思います。 俳優陣の名演も見所でありますです 目

 

では、また次回ですよ~! パー