「クロール -凶暴領域-」などのアレクサンドル・アジャが監督を務めたSFスリラー。

 

 

 

 

 

 

        -  OXYGEN  -    監督 アレクサンドル・アジャ

 

 出演 メラニー・ロラン、マチュー・アマルリック、マリック・ジディ 他

 

こちらは2021年制作の アメリカ アメリカ フランス フランス の合作映画です。(101分)

 

 

 

 

  ある女性は目を覚まし、自分が気密性のある医療用極低温ユニットに閉じ込められており、かつユニットの酸素レベルが急速に低下していることに気づく。彼女は自分が誰であるか、どのようにしてそこにたどり着いたかを覚えておらず、そのことで思い悩む。

 

 

 

 

彼女はミロという名前の高度なAIによって支援されていたが、管理者コードがないためユニットから出ることができなかった。彼女はミロを通じてポッドの外に送信し、緊急サービスに連絡する。彼女は、外部の窓口にユニットのモデルとシリアル番号を伝え、それらを印刷する。

 

 

 

 

ところが、メーカーに連絡すると、ユニットは3年前に破壊されたと言われてしまう。思い出せない彼女は、AIコンピューターで写真や記事を検索して過去の手がかりを探し、エリザベス・ハンセンという名前を見つける。彼女は自分が極低温の医者であることを理解する。

 

 

 

 

彼女はソーシャルメディアで夫のレオ・ファーガソンの連絡先番号を見つけて電話したところ、女性が出てくる。エリザベスは、自分がレオの妻であることを告げ、彼と話したいと言ったところ、相手が混乱したため、電話を切る。

 

 

 

 

酸素レベルが下がり続けると、エリザベスは幻覚を起こし始め、感電死するためポッドを開こうとする。その後、彼女は警察から折り返し電話を受けるが、彼らが何かを隠しているのではないかと疑い、電話を切る。その後、レオの番号から電話がかかり、この女性からレオが死亡していたことを告げられる。

 

 

 

 

その際、エリザベスはポッドを開くための管理者コードを教えらえるが、ポッドを開くことができないか、彼女は死ぬだろうと彼女に言う。エリザベスはコードを使用し、無重力の中で浮き始める。

 

 

 

 

無重力状態の中、エリザベスは電話の向こうにいる女性から、現在自分のいる場所と何故そこにいるのかを聞かされ驚愕するのだったが、、。

 

 

 

 

この作品、アメリカとフランスの合作映画なのですが、劇中の会話は全てフランス語で交わされているという不思議な作品で、タイトルの「OXYGEN オキシジェン」は酸素という意味になります。

 

 

 

 

閉所恐怖症の人には地獄ともいえる密閉空間閉じ込められ型スリラーで、回想シーン以外のほとんどはポッドの中だけで進行する物語で、以前ご紹介した閉じ込められ映画「リミット」と同類のワンシチュエーション作品です。

 

 

 

 

主人公の女性が見慣れない狭い空間で目を覚まし、生きられる酸素が残り少ない状況にある事を知ってそこから脱出しようと模索するというストーリーですが、目覚めた空間が明らかにクリーンで未来的なポッドの中という事で、最初からある程度未来のお話であるのが映像で明かされた状態からのスタートとなります。

 

 

 

 

ただこの映画の厄介な所は、主人公の女性の記憶がほとんどないという点、記憶のない状態から物語が始まり、ポッドの中を制御しているAIのミロを相手に、微かな手掛かりをヒントに少しづつ記憶を取り戻し、状況を打開していくという展開により、こちらと主人公が同時に謎を解いていく形でドラマが進んでいきます。

 

 

 

 

ここでの最大の魅力は感情の無いミロを相手に私たちがgoogleで検索するようにヒントになるようなワードや、過去にあったであろう記事やSNSの投稿を表示させ、少しづつ確信に迫ろうと、様々な記憶に残る断片を繋ぎ合わせ、それが結ばれ謎が明らかになっていく過程がスリリングに描かれています。

 

 

 

 

この手の多くの映画はそれが明かされたオチの瞬間が最大の見せ場なのですが、この作品は意外にも映画の中盤でその多くのからくりが明かされてしまうという所に意外性があって、好みは分かれるものの他の作品との差別化を宣言しているような意気込みを感じます。

 

 

 

 

後半では主人公の名前がエリザベスである事等のサスペンス的な目玉が明らかになってからがこの映画の本質的な物語の部分で、記憶が無く、誰でもなかったエリザベスが自身のアイデンティティを見つけ、自らの尊厳を確立していく人間的なドラマが描かれます。

 

 

 

 

映画の最後でそれまでエリザベスを番号で呼んでいたAIのミロが、エリザベスのことを番号ではなく愛称のリズと呼ぶ場面には、それまでの様々な思いが込もった人間性を微かに感じてしまう感動がありました。

 

 

 

 

ただ宣伝文句ほど酸素の残量によるサスペンス感は弱く、残り5%からの時間軸が結構ゆっくりしたものに感じてしまうという所もあります。回想場面が重要なキーになっているものの、目覚めた時間と終わりまでを鑑賞時間と同じにしたらもっと緊迫した映画になったかもと、正直ちょっと残念に思う部分もありました。

 

 

 

 

とはいえ密室の窮屈感や酸素が無くなる恐怖、何故ここに閉じ込められているのかという謎解きのサスペンスや突如現れるホラーな映像や恋愛要素など、様々な工夫でこちらの感情を揺さぶってくれる作品に仕上がっていると思いますので、機会がありましたらご覧になってみて下さいませ、です。

 

では、また次回ですよ~! パー