ジャバウォッキーは、ルイス・キャロルの「鏡の国のアリス」に登場する怪物。ジャバウォッキーの詩が朗読され、子供部屋のおもちゃが動き始める。
- ZVAHLAV ANEB SATICKY SLAMENEHO HUBERTA -
監督 ヤン・シュヴァンクマイエル
こちらは1971年制作の チェコスロバキア 映画です。 (14分)
以前、こちらでもご紹介した「アリス」「ルナシー」でお馴染みの映像作家ヤン・シュヴァンクマイエルの短編作品です。 「鏡の国のアリス」 の中に登場するナンセンス詩、「ジャバウォックの詩」から発想した不思議な映像世界が、シュールなストップモーションアニメで描かれています。
子供の声で 「ジャバウォックの詩」 が朗読される中、木々が生い茂る森の映像が映されます。 そこにカサコソと登場するクローゼット。
扉に近づくといつの間にかそこは子供部屋に早変わり。 乳母車に乗ったビスク・ドールは部屋を走り回り、クローゼットの中からは服だけの子供が飛び出してダンスを始めます。
すると壁から枝が生えて来て、部屋の中は木で覆われてしまいます。
枝にリンゴの実がなって、落ちた実の中からは虫の幼虫が現れます。
服の子供は木馬に乗ってはしゃぎクローゼットの世界へ入って行きます。
すると絵の描かれたブロックが落ちて来て、絵を揃え始めます。 絵が揃ったと思ったら裏から現れた黒猫がそれを崩して去っていきます。
部屋に横たわる人形の中から何体もの小さな人形がモゾモゾと這い出てきます。
服の子供の合図で人形たちは起き上がり、ドールハウスの中で遊びはじめます。
そのうち人形はコーヒーミルで挽かれたり、
アイロンで平べったくなったり、
紙の着せ替え人形に変身したり、
ブクブク煮込まれて料理されたりします。
料理された人形を食べるビスク・ドールの家族。
中から覗いてますね、、。
再びブロックの絵と黒猫が登場して次のお話へ、、。
机の前に居る服の子供の袖からおもちゃの兵隊が登場して行進を始めました。
引き出しからは積み木が出て来て様々なお城を形作ります。
そこへ赤ちゃんを模ったアクセサリーケースが乱入し抵抗する兵隊をなぎ倒します。
兵隊はケースに飲み込まれ消えてしまいました。 再びブロックの絵と黒猫が登場して次のお話へ、、。
ハンドルが人形をあしらった折りたたみナイフがテーブルの上でダンスをしています。しかし高く舞い上がりすぎたナイフは着地に失敗,
動かなくなったナイフからは真っ赤な血があふれ出します。 再びブロックの絵と黒猫が登場して次のお話へ、、。
部屋に置かれたカバンからノートが飛び出しページが開きます。
開いたページは破けて一枚づつ折られては飛行機や船、動物と形を変えていきます。
壁の写真の口からは女性が描かれたタイルと、時折舌ベロが覗きます。
クルクル回る道化師の人形、折られたページは鳥のように窓から外の世界へ飛び立っていきます。
再びクローゼットの扉が開くとそこには背広が掛けられていて、さっきまで動いていた服の子供は脱ぎっぱなしの状態で隅っこに押し込まれています。いたずら黒猫は鳥かごの中へ閉じ込められてしまいました、、。
以前の「アリス」と本作はどちらもルイス・キャロルの原作から派生した共通性がありますが、本作では生身の人間は一切登場しないストップモーションアニメ作品です。
唯一生物として登場しているのが黒猫(と幼虫)だけで、シークエンスを繋ぐ重要なキャラクターとして愛嬌を振りまいています。 そして迷路も、、。
子供時代の遊びや妄想を独特な切り口で映像化した作品ですが、今回はあの個性的な
音が排除されていて場面に合った音楽が常に流れているのが特徴的で、
リアルな音を使わない事で、より幼かった幼年期のファンタジックな世界を表現しているように思えます。
半面、ラストではそこからの成長や大人への変身という普遍的なテーマも垣間見えて、らしからぬセンチメンタルな気持ちにさせられる作品でもあります。
とはいえ美しく楽しい中にもグロテスクで残酷な描写もしっかりと存在しているというブレのないヤン・シュヴァンクマイエルの世界観は、本作でも十分味わえる作品になっていますので、機会がありましたらご覧になってみて下さいませ、です。
では、また次回ですよ~!