精神病院で母親を亡くし、悪夢にうなされるジャン。 同じ宿に居合わせた侯爵は、そんなベルロを自分の城へと招待する。 そこでは、完全な自由主義を唱える侯爵による禁断の儀式が繰り広げられていた。 やがて侯爵は、ジャン自分と同じセラピーを受けさせようと提案、彼の通う精神病院へと連れて行く、、。

 

 

 

 

 

 

こちらは2005年制作の チェコ  映画です。 (123分)

 

チェコの シュルレアリストの芸術家で、アニメーション作家・映像作家、映画監督 と

 

いう多数の肩書きを持つ、マニア系の作家 ヤン・シュヴァンクマイエル の監督作品の

 

本作は、エドガー・アラン・ポーの短編小説 「タール博士とフェザー教授の療法」 と

 

「早すぎた埋葬」 の2編を下敷きに、マルキ・ド・サドの著作をブレンドして、監督

 

の独特の表現で構成されたというカオスな設定の作品でございます。

 

 

 

 

演劇  母を精神病院で失って以来、悪夢に悩まされる青年ジャン。母の葬儀後、滞在し

 

ていたホテルで出会った侯爵に気に入れられ彼の屋敷へ招かれます。 

 

 

 

 

ある晩、屋敷から女性の鳴き声が聞こえ窓から覗くと、侯爵が神に冒涜的な言葉を吐

 

きながら、キリスト像に釘を打ち付け、女性とみだらな行為をする背徳的な儀式を目

 

撃します

 

 

 

 

ジャンは侯爵を責めますが、逆に言い包められてしまいます。 ただ、そんな侯爵にも

 

恐れているものがありました。 硬直する発作持ちの侯爵は、生きたまま棺桶に入れら

 

れ生き埋めになるのでは?という不安を抱えていました。 そんな不安を持つ侯爵はジ

 

ャンにシンパシーを感じ、彼の悩みである悪夢をある「療法」で治そうと提案します 

 

 

 

 

それは「ジャン自身が母親と同じ状況を体験すれば、母親の悪夢から解放される」と

 

説かれ、侯爵の知人が経営する精神病院に体験入院するという療法でしたが、、。 

 

 

 

 

本編が始まる前、監督本人が出て来て映画の説明が始まります。 「ご覧頂く映画は

 

ホラーです。 ホラーならではの落胆をお届けします。 この作品に芸術性を期待される

 

のは間違いです。 

 

 

 

 

芸術は死に 自己満足で広告的な物だけが残りました。」 という、御丁寧な解説。 こ

 

れもまた監督特有の皮肉でもあります。 本作の物語としては表裏一体とでも言いま

 

しょうか、人間という生き物の性と矛盾が描かれています。

 

 

 

 

自由と管理。 正常と異常。 神と冒涜。 といった大衆的な道徳と、個人的な価値観が

 

見る位置に応じて変化する曖昧さの恐怖を「ホラー」と定義付けているようです ドクロ

 

 

 

 

そしてこの ヤン・シュヴァンクマイエル監督の代表的とも言える、グロテスクでシュ

 

ールな表現である、人間を抽象化した実際の肉片    や臓器  脳みそ  を使ったストッ

 

プモーションアニメが、物語のブリッジとして挿入されていて、それが物語の簡略化

 

されたダイジェスト的映像として楽しめるという、一度で二度美味しい 二重構造 の作

 

品にもなっているのでした。

 

 

 

 

それでいて、シュールながらも エドガー・アラン・ポーの短編2作をそれなりに忠実

 

に映像化しているというのも面白かったりします。

 

 

 

 

頭のおかしな侯爵が、劇中で語る言葉に何故か説得力を感じてしまった私も、やっぱ

 

り紙一重の同類なのかも はてなマーク と不安になるような作品でした。 滝汗

 

 

 

 

ただ、どうしても物語本編よりも生肉のインパクトに勝るものはないのも正直な感想

 

です。すべてがぼんやりと、霧がかった悪夢や白昼夢のような映画です。 独特な映像

 

世界をご覧になりたい方には楽しめる作品だと思いますので、機会があればご覧にな

 

ってみて下さいませ、です。  目

 

では、また次回ですよ~!  パー