チェコのアート・アニメ界の巨匠、ヤン・シュヴァンクマイエルが25年も温め続けた会心の一作。抑えがたい欲望に衝き動かされ、さまざまな“自慰機械”の発明に没頭する男女6人の密かな楽しみを、“ブラック・グロテスク”スタイルで描く。

 

 

 

 

 

 

         -  SPIKLENCI SLASTI  -     監督 脚本 ヤン・シュヴァンクマイエル

 

 出演 ペトル・メイセル、ガブリエラ・ヴィルヘルモヴァー、

                                                                   バルボラ・フルザノヴァー 他

 

 こちらは1996年制作の チェコ  イギリス イギリス スイス  

                       の合作映画です。(87分)

 

 

 

 

 

 

  プラハ。 ピヴォイネはある日、クラの書店でポルノ雑誌を眺めるうちに興奮し、家へ帰ると服を脱ぐ。そこへ郵便配達婦のマールコヴァが手紙を届けにやってきて、そこには「日曜日に」とだけ書かれていた。 振り返ると、隣の部屋の中年女ロウバロヴァがその様子を盗み見ていた。 彼は慌てて部屋に入り、手紙を燃やす。 

 

 

 

 

 

 

マールコヴァはピヴォイネのアパートの階段の陰で、小さなパンの固まりをいくつもこね始める。 部屋を飛び出したピヴォイネは金物屋で黒い傘を買う。 ふと見ると、先客のベルティンスキーが鍋蓋を掴んで鼻息を荒げていた。 店主のクラは早々に店を閉め、テレビのアナウンサー、アナをぎらぎらする目で見入っていたが、やがて昼間作りかけの複雑な装置を取り出した。 

 

 

 

 

 

 

ピヴォイネは鶏の首を切り、その血を風船に詰めた。それからロウバロヴァの部屋に忍び込むと、彼女のミシンで傘を縫い合わせて大きな翼を作り、彼女の服を盗んだ。 部屋へ戻り、粘土で巨大な鶏の頭を作った。殺した鶏は大きなオーブンで焼き、人形を縫った。 

 

 

 

 

 

 

マールコヴァは別のパンを買い、勤務中にせっせとこね続ける。ベルティンスキーは工事現場で刷毛を、スーパーで指サックを盗んだ。 また、同じエレベーターに乗り合わせた女の毛皮の襟巻きを剃刀で切り取ると、それらを手に帰宅し、人目を盗んで離れに逃げ込む。 

 

 

 

 

 

 

家の窓からその様子を見ているアナ。 それに気づいたベルティンスキーはカーテンを閉め、アナは涙を流す。クラは真っ赤なマニキュアを塗ったマネキンの腕を機械に取り付け、リモコンで操れるようにした。 ロウバロヴァは藁を集め、ロウソクを買った。アナは離れの様子を気にしながら、タライに水を張り、大きな鯉を飼い始めた。そして日曜日になると、、。

 

 

 

 

 

 

以前ご紹介したダークアニメーション「アリス」のヤン・シュヴァンクマイエル監督による長編3作目の作品で、その内容はとっても大人向け。 何せこの作品、サド、マゾッホ、ブニュエル、エルンスト、フロイト、ブルークという6人の「エロティックな趣味人」にささげられているという、未成年者お断りの見事な「変態賛歌映画」でございます。

 

 

 

 

 

 

ここに登場する人物は6人、青年ピヴォイネは自分でニワトリの頭をポルノ雑誌で、傘で翼を製作して身にまとい、人気のない空き家で自作の女性の人形を前に自己解放の舞で昇天します。 郵便配達婦のマールコヴァは小さなパンの粒をひたすら作り、溜まった粒を自宅のベッドで鼻と耳から自身に注入しトランス状態で昇天します。

 

 

 

 

 

 

中年女ロウバロヴァは自宅でせっせと男性の藁人形を製作、廃墟となった教会で藁人形相手にハードなSMプレイに興じて昇天します。 警官のベルティンスキーは町中で指サックやブラシ、毛皮の襟巻を盗んで自宅に持ち帰り、特殊な道具を製作します。 妻のアナには無関心で、離れの小屋に引きこもり特性の道具で快感に浸り昇天します。

 

 

 

 

 

 

妻でテレビのアナウンサーをしているアナは離れに引き込んでいる夫の姿に悲しんでいました。 ある日、鯉を買って帰るとタライに水を張り飼い始めます。 そのウロコの肌触りと餌を飲み込む口に快感を覚え、テレビの本番中、鯉に足の指を吸わせて昇天します

 

 

 

 

 

 

本屋のクラはテレビの中のアナに恋していました。 そんな彼はテレビにマネキンの腕を取り付け、機械で動くように細工します。 遂に機械は完成し、裸になったクラは機械を作動させてアナの映るテレビにキスをして昇天するのでありました、、。

 

 

 

 

 

 

6人6様の快楽への探求心の凄さと熱意が克明に描かれている本作、様々な行いや社会のメタファーが織り込まれてはいるのですが、そんな小難しい解釈はどうでもよくなるような映像の面白さとデフォルメされた音が気持ち悪くて快感になるような作品です。

 

 

 

 

 

 

ここに登場する人物の変態ぶりに、それでもどこか共感してしまう部分もあって、自分が普通に感じている事や振る舞いや、他人に見せないダークな一面が必ずしも普通なものか、普通っていったい何?って問われている気にさせられます。

 

 

 

 

 

 

この映画こそがシュヴァンクマイエル監督の快楽であり、観た私達がその共犯者にさせられてしまったというメタ構造の作品で、ある意味監督の嗜好をさらけ出した告解映画にもとれます。 

 

 

 

 

 

 

人の熱意や情熱って結局はこういう事から沸き起こるんじゃないか?と気づかされる作品で、ユーモアと芸術、嫌悪感と快感が同居した、気持ち悪くて気持ちいい、どこにもない圧倒的なDIY映画体験作品ですので機会がありましたら是非一度ご覧になってみて下さいませ、です。

 

 

では、また次回ですよ~! パー