「大進撃」のジェラール・ウーリー監督が、人気俳優ジャン=ポール・ベルモンドを主演に迎えたアドベンチャーコメディ。
- Le cerveau - 監督 ジェラール・ウーリー
出演 ジャン・ポール・ベルモンド、デビッド・ニーブン、イーライ・ウォラック
こちらは1969年制作の フランス イタリア アメリカ
の合作映画です。(100分)
グラスゴーとロンドン間の列車強盗事件の首謀者ブレインのことが、センセーショナルに報道されているパリ。 タクシーの運転手アナトールは、かつての相棒アルトゥールを、刑期満了の四日前に脱獄させた。というのは二日後には、一世一代の大仕事が待っていたからだ。
その仕事というのは、NATOが、パリからブリュセルへ運ぶ秘密軍事資金をいただこうというのだ。 ところがなんと、ブレインも、その資金を狙っていた。彼は、その名も頭脳というほどのキレ者。 自らの脳ミソの重さで、時々、首が曲がってしまうくらいである。
この二組が、同じ日、同じ時間、同じ場所で列車襲撃を計画したのだから、これはまたなんたる偶然。 しかも、かつてブレインの共犯者でシシリーのマフィアのボス、スキャナピエコも加わった。
彼にはソフィアという美しい妹があり、彼女を病的なほどに愛している。その彼女にブレインが恋をしてしまったのを知り、嫉妬心も手伝って、ブレインに一杯喰わそうという算段だ。さて決行の日。まず、金袋はアナトールとアルトゥール組の手に渡った。
だがそこはチンピラの悲しさ、ブレインの頭脳にはかなわない。かくして大金は、パリからベルギーへ、さらにロンドンからシシリーを通ってニューヨークまで行ってしまった。大西洋上の豪華船の船上に札束は舞い、すべて元の木阿弥。 三巴の勝負は引き分けとなったが、、。
イギリスで実際に起こった1963年の大列車強盗を元にしたコメディ映画の本作。 少し前にご紹介した「大空港」同様、原題に「大」を付けがちな日本タイトルのセンスが光る作品ですが、そのお堅いタイトルとは真逆のスラプスティックでゆるさ爆発なお話です。
ブレインと呼ばれる頭脳明晰な泥棒が新たに企てた現金強奪計画を中心に、イタリアマフィアのボスと、刑務所を脱獄したちんけな泥棒とその相棒の3組が絡んで、列車で輸送される巨額の軍事資金を我が物にしようとするドタバタな姿が描かれます。
コメディ映画としてはかなりゆるい笑いが延々と繰り広げられる作品ながら、映画のスケールはかなり大がかりなもので、刑務所を皮切りにフランスのエッフェル塔や凱旋門でのロケーション、豪邸から実際の列車を使った強奪戦、面白カーアクションや大量の花火が舞う中での面白バトルと抜かりがありません。
それにも飽き足らず後半では巨大な自由の女神像までが登場、最後は港の客船を舞台に大量の札束が舞う派手なエンディングで大団円を迎えるという、これでもか!の大サービスっぷりで、ストーリーの早い展開に負けないくらいにそのロケーションや舞台も変化していく豪華さには驚いてしまう程です。
その豪華なロケーションと笑いのバランスは正にルパン三世の世界を見ているような気にさせられる程で、ブレインの屋敷に忍び込んだベルモンドの姿は髪型から身のこなしまでルパンそのもので、ラストの札束を服の下に詰め込む姿まで似てましたよ
凜としながらもどこか飄々としたデビッド・ニーブンのコメディセンスや、いかついイメージのイーライ・ウォラックが見せるゆるい笑い、その妹役のシルビア・モンティが見せるセクシーなお色気も良いスパイスになっています。
大笑いしないまでもクスっと笑えるコメディ感や、俳優陣の身体を使ったドタバタから大がかりなアクション場面。 脱獄の穴掘りを横から見せる漫画チックな映像や、実際のヒョウとの共演アニメーションも挿入されていたりと、とにかく愉快。
真っ二つになっても走る車や水槽破壊で水浸しの部屋等、見せ場のラッシュがてんこ盛りですが、その反面、後半の現金争奪バトルや騙し合いといったストーリーにもひねりが利いていて絶妙に小気味いいエンディングまで飽きさせません。
パリの名所や街並み等、お洒落な外国の生活をちゃんと見せてくれる観光映画としての側面も抑えて、当時の娯楽エンターテインメントとサービス精神がこれでもかと詰め込まれた豪華な作品となっていますので、機会がありましたらご覧になってみて下さい、です。
では、また次回ですよ~!