「勝手にしやがれ」のジャン=リュック・ゴダールの長編第3作目で、登場人物が歌わないミュージカルコメディという発想に基づいて制作されたラブコメディ。

 

 

 

 

 

 

 - UNE FEMME EST UNE FEMME -   監督 脚本 ジャン=リュック・ゴダール

 

 出演 アンナ・カリーナ、ジャン=クロード・ブリアリ、

                                                                 ジャン=ポール・ベルモンド 他

 

こちらは1961年制作の フランス映画 フランス です。(84分)

 

 

以前ご紹介した 「気狂いピエロ」 や 「勝手にしやがれ」 の ジャン=リュック・ゴダールの監督作品でアメリカミュージカルをオマージュしたようなポップな映画でございます。この作品でベルリン国際映画祭では主演のアンナ・カリーナが女優賞、ゴダールが監督賞を受賞しております。

 

 

 

 

  パリの小さな本屋で働くエミールのもとへ、アンジェラという女性が訪れます。 二人は同棲している恋人同士。 本屋を出たアンジェラに、彼女に気があるアルフレッドという男が話しかけますが、それを軽くあしらってアンジェラは仕事先へと急ぎます。 彼女はコペンハーゲンから来たばかりで、ストリップ小屋の踊り子をしていました。 ショーが終わり外へ出た彼女をアルフレッドが待っていました。 彼はアンジェラを口説こうとしますが、アンジェラはなかなか相手にしてくれません。

 

 

 

 

家に帰り食事の支度をしていると、エミールが仕事から帰って来ました。帰宅早々二人は口喧嘩を始めてしまいます。 その食事の席で、アンジェラは突然エミールに子供が欲しいと言い出します。 エミールはそれに賛成し、じゃあ結婚だと喜ぶアンジェラに、まだ子供はできていないのだから結婚は先だとエミールは冷たく答えます。再び言い争いを始める二人。 今すぐ子供が欲しいと言うアンジェラは、他の男に頼むと言い出します。 二人は仲違いして互いに家を出て行きます。 ​

 

 

 

 

エミールは他の女性へ、アンジェラはアルフレッドと、それぞれ別の時間を過ごすのですが、、。 というお話です。子供が欲しいというアンジェラと、結婚すら先と考えているエミール。 そしてアンジェラに隙あらばと口説くアルフレッド。 ほぼこの3人が織りなす男と女の駆け引きと、恋愛のお話がメインではありますが、ストーリー自体にはさほど趣きは置いておらず、映像で物語るための一つのプロットとして設定されている物語に感じました。

 

 

 

 

ミュージカルと言っても、曲に乗せて突然歌い踊りだすという既存のミュージカル場面はほぼ無く、無伴奏でアンジェラが歌うというシーンがある位で、ほとんどの場面はBGMとして音楽が」流れます。 しかし、このBGMもただの伴奏という訳ではなく、劇中の主人公の動きや動作にシンクロして流れたり、場面によっては人物の意志を表現する手段として使われたりしています。 他にも編集に合わせ一つの音楽が流れては切れたり切れては流れたりと、第四の登場人物のように意志を感じさせる使い方をしています。

 

 

 

 

この音楽を担当しているのが、この作品の後に 「シェルブールの雨傘」や「ロシュフォールの恋人たち」で名を馳せる ミシェル・ルグランでありまして、本作でもその素敵な旋律を聞かせてくれています。 演出も楽しく、時に観客に向かって目配せや挨拶をしたりと映画ならではの遊びを見せてくれます。

 

 

 

 

そしてこの作品でとにかく目に付くのは、これでもか!と言わんばかりの 「THEフランス」的な映像の美しさです。 いちいち憎たらしい程の街並みと車のデザイン、部屋のインテリアと構図。 アンナ・カリーナ扮するアンジェラの斬新な色使いの可愛らしいファッションとヘアーメイク。アンナ・カリーナ自身も魔性のコケティッシュさが画面から溢れています白、赤、青の国旗をイメージさせる色彩感覚にほとほと見惚れてしまいます。 どこを切り取っても絵になる当時のフランスに嫉妬するばかりの私でありました、、。電気スタンドを持ってウロウロや、本のタイトルを見せ合っての言い合い、丸こげのローストビーフへ誘導する二択問題など、本作でのゴダールはいちいちお洒落で遊び心いっぱいです。

 

 

 

 

撮影から編集から、きっと楽しみながら映画というオモチャをゴダールは作っていたのではないか?と思わせてしまうような作品です。 そんな事もあってか、本作には映画に関するセリフはもとより ジャンヌ・モローや「地下鉄のザジ」の主人公もチラリと出演していたりします。 普遍的な男女の価値観といったテーマも含まれていますが、理屈はひとまず置いといて、画面から流れる映像と音楽を楽しむのが一番な映画ではないでしょうか、そんな訳で、この機会にでも一度ご覧になってみてはいかがでしょうか、です。

 

では、また次回ですよ~!  パー

 

 

 

 

 

 


以前、こちらの映画で遊んだMVです。 よろしければご覧下さいね。 音譜