ヌーベルバーグを代表する女性監督アニエス・バルダ初期の傑作で、ガンの診断結果

 

を待つ若い女性歌手クレオの5時から7時までをリアルタイムで切り取った作品

 

 

 

 

 

 

 

 

                      - CLEO DE 5 A 7 -     監督 脚本 アニエス・ヴァルダ 

 

出演 コリンヌ・マルシャン 、アントワーヌ・ブルセイユ 、 ドミニク・ダヴレー他

 

こちらは1962年制作の フランス フランス イタリア イタリア の合作映画です。(90分)

 

 

 

 

  ポップシンガーのクレオは7時に電話で医師から、先日の検査の結果を教わることになっていました。  時刻は5時、もしかしたら自分は癌なのかも知れないという不安と恐怖の中、タロット占いに訪れていました。  気休めのつもりでしたが、占いは思わしくないカードが出てしまい、クレオは動揺して泣きだしてしまいます。 その場を後にした彼女は付き人の中年女性と落ち合い、アパートに帰ります。

 

 

 

 

しばらくして恋人ジョゼがやって来ました。 彼はいつも忙がしく、彼女の心配事どこか上の空で、クレオは自分の孤独を強く感じました。 ジョゼが帰った後、作曲家のボブと友人が入れ替わりにやって来ました。 いつものように陽気な彼等はピアノに向かって新曲をクレオに聞かせ、次のレコードの相談をします。 それどころではない心境のクレオは黒い服に着がえ、一人町へと出て行きます。 カフェでコーヒーをのみ、ジューク・ボックスでレコードを聞いてみますが淋しさは募るばかり。 

 

 

 

 

その足で、モデルの仕事をしている友人のドロテに会うためにアトリエに向かうクレオ。ちょうど仕事を終えたドロテの運転でドライブに出かける二人。 彼女にも病気の事を打ち明け、ドロテも心配してくれますが、クレオの心は安らぎません。 車が到着した先はドロテの彼氏が映写技師をしている映画館でした。 そこでちょうど上映していたコメディの短編映画を映写室から3人で観て笑うのでした。

 

 

 

 

ドロテと別れたクレオは行くあてもないままモンスリ公園へと入っていきます。 遊具には多くの子供達で溢れていました。 虚ろな気持ちのクレオにはそんな光景は眩しいだけでした。 公園の奥へと進むと人影のない滝を見つけます。 ひっそりとせせらぎの音に耳を傾けるクレオ。 そこへ突然現れた男に彼女は話しかけられます。 おしゃべりな男をちょっと警戒しますが、その男は休暇中の兵士で、軍隊にその晩戻らなければならいと言います。 

 

 

 

 

少し心を許したクレオは癌への不安を口にします。 すると彼もまた戦地アルジェリアに送られて死に直面する不安を抱えていることが分かりました。 7時に電話で医師に検査結果をきくことになっていると言うクレオに、一緒に医師に会いに行って、直接結果を聞こうと提案してきました。 その代わりに駅で彼を見送ってほしいと頼まれます。公園を出てバスに乗り病院へ向かう道中、男との何気ない会話によってクレオの心は少しずつほぐれていきます。 そして病院に着く頃には彼女の恐怖心と孤独は消えていることに気づくのでした、、。

 

 

 

 

オープニングのタロット占いの場面だけカラーで、その後はモノクロというちょっと風変わりでお洒落なおフランス作品ざます。 これは主人公クレオの不安な心象を、モノクロという映像で表現したものなのでしょうね。 物語としては特にドラマチックな事も起こらず、検査結果を知るまでのサスペンス的な演出も有りません。 そのタイトル通り「5時から7時までのクレオ」が過ごす不安な2時間をドキュメント風に追っているだけの作品です。

 

 

 

 

ただ、その短い時間の中にもしかしたら死ぬかもしれない病の恐怖と、それを理解、共有して欲しい願望親しい友人達の無関心からの懐疑心と孤独といった、他人から自分はどのような存在に思われているのか?という心の葛藤の移り変わりが、他者とのふれあいによって描かれています。

 

 

 

 

ただ、そんな難しい事を考える必要もない位、ここに映されている60年代のフランスの映像は観ているだけで、ただただ素敵です。60年代の街並み、帽子店の帽子、街を走る車、カフェと人々、クレオの部屋とそこに暮らすネコたち、お洒落な服とヘアースタイル、鏡とウィンドウ、舗道と街路樹、そこから射す木漏れ日、車内から見える雑多な景色、等々いちいち可愛くて洒落です。 そしてそれらを成立させてしまうフランス語の甘いささやき。 

 

 

 

 

カメラの動きと映像の構図、編集そして音楽。 出演もされているミシェル・ルグランのルグランらしい曲も素敵ですが、この映画の中では様々なタイプの実験的音楽が使われていて、クレオの内面の変化に合わせ時に優雅に時にサスペンスタッチな楽曲と見事に使い分けられています。

 

 

 

 

作曲家のミシェル・ルグラン以外にも本作には、ジャン=リュック・ゴダール、アンナ・カリーナ、エディ・コンスタンティーヌ、そしてジャン=クロード・ブリアリが、劇中のサイレント映画の中の登場人物としてカメオ出演していて楽しませてくれます。クレオという女性が過ごす2時間という時を映しただけの作品ですが、女性ならではの不安と恐怖心、時間の過ごし方や邂逅によって変化する心の動き等、観る人によって様々な見所がある映画だと思いますので、機会があれば一度ご覧になってみて下さい。

 

では、また次回ですよ~! パー