アーサー・ヘイリーによる同名の小説を原作とするパニック映画の元祖。 後に続くエアポートシリーズ4作品の第1作目。

 

 

 

 

 

 

            -  AIRPORT  -  監督 脚本 ジョージ・シートン

 

 出演 バート・ランカスター、ディーン・マーティン、ジーン・セバーグ 他

 

こちらは1970年制作の アメリカ映画 アメリカ です。(137分)

 

 

 

 

  アメリカ中西部地方を襲った30年来の猛吹雪のため、リンカーン国際空港は痛烈な打撃をうけていた。 空港のジェネラル・マネージャーのベーカースフェルドは、トランス・グローバル航空旅客係のタニアの援助をうけ、空港の機能維持のため狂奔していた。 このとき着陸に失敗した大型ジェット旅客機が誘導路から脱輪し、積雪の中に車輪を沈ませてメイン滑走路を閉鎖させてしまう。 

 

 

 

 

この致命的な事故の処理を、ベーカースフェルドは、トランス・ワールド航空の保安係主任パトローニに依頼した。 ベーカースフェルドは、派手好きな妻シンディのいる冷たい家庭からの慰めをタニアに求めるようになっていた。 そんな時にも、この空港からいましもボーイング707 機が飛び立とうとしていた。

 

 

 

 

機長のデマレストと副機長のハリスは、ともにベテランのパイロットだったが、主要滑走路がふさがれていることを非常に心配していた。 デマレストはベーカースフェルドとは義理の兄弟であったが、強情な2人はそれぞれの立場を譲らず、事故機の処理について激しく言い合うのだった。

 

 

 

 

このデマレストには、現在他人に言えない悩み事があった。妻のサラがいるにもかかわらず、スチュワーデスのグエンと恋仲になり、彼女に子供までできてしまったのである。そうこうしているうちに、いよいよローマ行きボーイング707 機が離陸することになった。このとき、ベーカースフェルドとタニアが気づいたにもかかわらず、密航常習の老婦人クオンセットが、まんまとこれに乗り込んでしまった。

 

 

 

 

吹雪をついて機が離陸したあと、大変な問題が明るみに出た。 イネスという女が、彼女の夫D・O・ゲレロが、彼女に生命保険金を残すため、爆弾を抱いたまま飛行機に搭乗したと告げてきたのだ。ゲレロは戦争中の傷のため精神に異常をきたしていたのだった。

 

 

 

 

機長のデマレストは乗客に怪しまれないようゲレロの座席を確認し、どさくさに紛れて爆弾の入ったカバンを取り上げようとするが失敗に終わる。 説得を試みる機長だったがパニックに陥ったゲレロはトイレに立てこもり爆弾を爆破させてしまう。

 

 

 

 

その結果、ゲレロは惨死、グエンは重傷を負い、機体には大きな破損箇所ができてしまった。 機内の気圧は急速に低下、乗客たちは酸素不足に苦しみはじめた。 デマレスト達は、ただちにリンカーン空港に引き返す処置を取る。 遭難信号を受けた空港側は、着陸用のメイン滑走路を開ける為、積雪に埋まった大型旅客機を移動させる作業に取り掛かるのだったが、、。

 

 

 

 

確か小学生の頃からテレビの〇曜ロードショー等で度々放送され、その都度観ていたこの映画。 面白かった記憶を頼りに数十年ぶりでレンタルしてみました。 70年代の「ポセイドン・アドベンチャー」や「タワーリング・インフェルノ」といったオールスターキャストによるパニック映画の元祖と称される本作。 この年のアカデミー賞では10部門にノミネートされ、ヘレン・ヘイズが助演女優賞を受賞しています。

 

 

 

 

改めて鑑賞してみての感想は、パニック映画としてはかなり地味。現代の作品は勿論ですが、後に作られた同系のパニックものと比較しても、巨大なセットや爆発、火災という派手な演出はほぼ皆無。 映画が始まっても中盤あたりまでは空港で働く人物の仕事ぶりや家庭の事情、不倫関係といったドラマが事細かに描かれていくばかりです

 

 

 

 

と、まるで否定的な意見にも聞こえますが、この日常の業務や人物のバックグラウンド、そして人間関係を掘り下げている事で、その後の空港というある種閉ざされた空間での危機的状況下でのそれぞれの行動に、様々な動機や意味が感じられるものになっていて、よりパニックに説得力が生まれています。

 

 

 

 

後半の爆弾犯との攻防からの爆破で一気に物語が加速していく面白さ。機内でのパニックや乗務員の対応。 危機的状況での管制塔とのやりとりや、地上で待つ空港関係者の行動といった、時間との勝負でそれまでのドラマが一つに集約していく緊張感と気持ち良さ。それぞれのキャラクターが自身の仕事をベストな状態でまっとうしようとする姿には感動すら覚えます。 そして雪の存在は大きかったですね。

 

 

 

 

バート・ランカスターやジーン・セバーグといった名だたるスター俳優に紛れて中盤から登場するのが無賃搭乗常習犯のクオンセットお婆さん。飄々とした態度で悪知恵の利く憎めないキャラクターで、重く退屈になりがちな物語に絶妙な笑いのスパイスが加わり、映画を人間味あふれるユーモアな作品に仕上げています。

 

 

 

 

その正反対をいく爆弾犯とその妻のエピソードも印象深く、戦争の後遺症で病んでしまった夫は、 献身的で貧しい暮らしをさせてしまったという自責の念から自身に保険金をかけて爆弾による飛行機事故を企ててしまいます。 自爆によって男は死にますが、事故に巻き込まれた乗客に残された妻が謝ってまわるという場面には切なくなりました。

 

 

 

 

散りばめられたそれぞれの人物のエピソードが交錯して描かれ、それが一つの出来事に集約していく構成の巧みさは群像劇のお手本とも思える見事さがあり、出演者ばかり豪華で多い日本映画との違いを痛感してしまった私でした。

 

 

 

 

視覚的な派手さはありませんが、実際の航空機を使った映像の迫力や空港の空間演出。 やたら多様当時の空港のセキュリティの緩さやエコノミー席でもタバコが吸えたという驚愕の時代感、うるさい客をビンタする牧師と、同じくクオンセットお婆さんをビンタするジャクリーン・ビセットと細かい見所や笑い所も沢山ある作品です。

 

 

 

 

出迎えた妻の目の前で不倫をカミングアウトする機長のデマレストや、離婚が決まったその足で新たな恋人と彼女の自宅へ向かう空港長のベイカースフェルドなど、「え?」と思いつつも、事故が無事に済んだんだからオールオッケー!的なエンディングにハリウッド映画のパワーを感じました。 時代って怖い、、。

 

 

 

 

アメリカンニューシネマに対抗したハリウッド的な大作で画面を分割したスプリットスクリーンが多様されていたり、アルフレッド・ニューマンの遺作となった音楽の豪華さ等、面白さと凄みを感じさせられるパニック映画となっていますので、機会がありましたらご覧になってみてはいかがでしょうか、です。

 

 

では、また次回ですよ~! パー